響き渡るは静寂 1

「アオーーーーーンッッ」
響狼と言われしカム・オルガロンの響き渡る咆哮に、4人のハンター達は皆、後退りする。
ガチャッ。
ハンター達はそれぞれ武器を構え、戦いに挑む。
一方、巣穴の中には、右へ行ったり、左へ行ったりとウロウロ落ち着かない様子のノノ・オルガロンがいた。
それもそのはず、沼地のとある場所でツガイのカム・オルガロンと2匹静かに過ごしていた時、突然4人のハンター達が襲ってきたのだ。
カムに巣穴に戻るよう促され、仕方無くこうして巣穴に戻って来たものの、カムの事が心配でならない。
「クゥーン」
カムを信じて待っている事しかできないノノは座り込み、巣穴の入口から遠い空を眺めた。
ザザッ。
地面を蹴り上げ勢いを付けたカムは、宙へと舞い、背中の棘を直線上に飛ばす。
「あっ!」
着弾した棘の風圧で尻もちを付いてしまったハンター。
「おいっ、大丈夫か?!」
「ゴメン、大丈夫、大丈夫」
すぐさま立ち上がり、戦闘態勢を立て直す。
あれからしばらくの間、死闘を繰り広げたのだろうか、カムの身体のあちこちには、切り傷やら矢傷やらで血だらけになっていた。
それでも手負いの虎のようにカムは、白い牙を剥き出しに激しく唸り、少しの負い目も見せなかった。
「これで終わりだーーっ!!」
リーダー格風のハンターが構える大きな剣がカムへと襲いかかる。
カムはそれを避けようとしたが、一瞬遅かった。
「ウウッ・・・ウッ・・・」
カムはその場にゆっくりと倒れ込んだ。
虫の知らせか、何かを感じ取ったノノは、急いでカムといた元の場所へと全速力で駆けて行く。
辿り着くと、そこには横たわるカムの姿があった。
カムの傍らへと急ぎ、鼻っ柱でカムの身体を突くが何も反応が無い事に、ノノはカムの死を悟った。
辺りを見ると4人のハンター達がいた。
その中でもリーダー格風の大きな剣を携えた男が近寄って来た。
ノノは低く唸りながらその男を睨んだ。
その顔は絶対に忘れない。
そしてこの匂いも絶対に忘れない。
いつしかカムの復讐をしてやると誓ったノノは、強くも哀しげな咆哮を響き渡らせてその場を立ち去った。