それいけ!ファンゴ君 2019特別編

ボクは、究極のドスファンゴになる事を夢見て、一匹旅をしている。

長い旅路の果てにボクが辿り着いたのは、のんびりとしたアプトノスが群がる、緑豊かでとても穏やかな場所だった。
そろそろお腹が空いてきたなぁ。
キノコ、キノコ……。
なんと!
こんなに緑がいっぱいあるのに、キノコの一つも無いとはッ!
まったくけしからん。

ピヨピヨ、ピヨピヨッ、ピヨピヨピヨピヨ。

突然聞こえてきた声の方へ顔を向けると、アプトノスの背中に鳥の大群が乗っていた。
なんとまぁ、真っ白でモッフモフ三昧の可愛らしい鳥だこと。

「ピヨ、バーカ、バーカ」
「ピヨッ、バーカ、バーカ」
「ピヨピッ、バーカ、バーカ」
モフモフズは、このボクに向かって一斉に大合唱を始めた。
おし、前言撤回。
そして、こんな挑発に乗るボクではなかった。

「ピヨ、デーブ、デーブ」
「ピヨッ、チービ、チービ」
「ピヨピッ、モサーイ、モサーイ」
……くっ、ボクはこういう生き物なんだよ。
それに、ブルファンゴの中でもボクはまだシュッとした方なんだ。
それでも鳴りやまない誹謗と中傷の大合唱に、ボクの堪忍袋の緒はついに切れた。
だけど、最近はパワハラがどーの、コンプライアンスがどーのと何かと世間がうるさいから、ボクはこの怒りを鎮めるように後ろ脚で地団駄を踏んだ。
すると、モフモフズはボクの渾身の蹴りに恐れを成したのか、一斉に逃げて行った。

ところが、一羽だけ残ったモフモフが足をグーンと伸ばしたり縮めたりしながら、ジーッとボクを見つめていたかと思うと、アプトノスの背中からボクの頭上へ飛び移った。
「ウォイッ! 止めろよ、なんでボクの頭に……」
ボクがいくら頭を振ってもモフモフは逃げていかない。
「ここで何してるピヨ?」
えっ?
「あぁっと、ボクは旅をしてるんだ」
「あっそーピヨ。なら、いい所教えてあげるピヨ」

テッテレー♪
フワフワクイナが仲間になった!

ボクはモフモフの言うままに、海が見える場所の岩の隣にある一本の木の前に辿り着いた。
「ここは?」
「もう少ししたら、ここに珍しい虫がやってくるピヨ」
虫か……貴重なたんぱく源だな。
その珍しい虫とやらが来るまで海を眺めて待っていると、沈みかけた太陽で空が綺麗なオレンジ色に染まってきた。
「あっ、来たピヨ。捕まえるピヨッ!」
「ボ、ボクが捕まえるのかい?君の方が捕まえやすいんじゃ」
「何言ってるピヨ。今年は亥年なんだからアンタが活躍しないでどうするピヨ?」
え、ボクの……年?
ということは、今年のボクはモテモテで、他から一目置かれる存在になる……のか?

ファンゴ君、半端ないって!
あいつ、半端ないって!
どんなゲスい大型モンスターにも、めっちゃ猪突猛進でカマすもん。
そんなのできないだろ普通、そんなのできる?
できるヤツいたら、連れてきて!

こうしてボクの武勇伝が広がっていくんだな、うむ。
「よし、任せろっ」
これぐらいの高さにいる虫一匹を捕まえられないで、ドスファンゴになれるはずもない。
ボクは助走をつけると、虹色に輝くなかなかにエモいカブトムシを目掛け、今年の期待に添えるような大ジャンプをかまし、センシティヴなお口でゲットントン!
「よくできましたピヨ」
ふふん、このボクにかかればこれぐらい夕飯前さっ。
「教えてあげたんだから、半分もらうピヨ。アンタには頭の方をあげるピヨ」
えっ?
頭って……ほとんど角じゃまいかっ!?

ボクの飽くなき道の冒険譚は・・・・・・まだまだ続くっ!!