祭りの思い出 6

マークは、空になった鍋を机の上に置き、散乱した自分の部屋を掃除した。
掃除しながらまた泣いた。
と、その時、叔父がマークの家を訪ねて来た。
泣き腫らしたマークの顔を見て、叔父は何があったのかマークに聞いた。
マークは、ルーを今しがた火山へ放流してきたことを伝えた。
「あぁ、何てことを!!」
叔父は自分の頭を両手で抱えた。
「マーク、最初にヴォルガノスを預かる時の五つの約束を覚えてるか?」
マークは、一つずつその約束を口にした。
「・・・四つ目エサは1日3回、五つ目、・・・あっ」
『五つ目、決して火山へ放流しない』
「ど、どうしよう、叔父さん?!」
実は今日、ギルドからヴォルガノスを故郷へ帰す手配が済んだと連絡が来たことを叔父はマークへ伝えた。
「正直にギルドマスターへ話をするしかないだろうな・・・」
マークは自分のした事の重大さに気付き、号泣した。
マークが落ち着いた頃、叔父はマークと一緒にギルドへとやって来た。
ギルドマスターへと取り次いでもらい、マスター室へと通された。
そこにはギルドマスターと呼ばれる小柄な老人が、大きな机にちょこんと座ってキセルを吹かしていた。
終始涙ぐみながら俯いていたマークに代わり、叔父が説明をした。
マスターは、キセルを静かに置いた。
「話は分かっぞい。だが溶岩の中でヴォルガノスの稚魚を探すのは到底無理な話じゃろうて」
うーむとマスターはその短い腕を組み、目を瞑りながら考え込んだ。
「原種がうようよといる火山で果たして亜種の稚魚が無事育つかどうかも分からん。万が一、亜種の稚魚が立派に育ち、火山の生態系を脅かす存在となり得るなら、ギルドから討伐の依頼をせにゃならんのう」
ルーを討伐?
それまで俯いていたマークは初めて顔を上げた。
「そうじゃろう、小僧?」
ルーが討伐されるなんて考えてもみなかった。
マークは頭が真っ白になって言葉を失った。
取り敢えずは、数年様子を見るということで話が終わり、叔父とマークは深々とお辞儀をしてマスター室を後にした。
俯くマークの肩を叔父が支えながら、長い廊下を歩いた。
人気の無い廊下で、一人の少年とすれ違った。
カイルだった。
マークは俯いていた為、それがカイルだったとは気付かなかった。
が、カイルはすぐにマークだと気付いたが、声を掛けられるような雰囲気ではなかったので、そのまま静かにすれ違った。
カイルはマスター室にノックもせずに入った。
「よぉ、じぃちゃん!」