祭りの思い出 10

「おいっ!来るぞ!!」
まさかここまで来て気が変わったのかと心配したカイルが、マークへ言い放つ。
ルーはその大きな体で溶岩から勢いよく飛出し、岩場のこちらへ這いずって来た。
カイルは自慢の盾でルーの突進をガードした。
ハッと我に返ったマークも慌てて盾でガードした。
ガッッ!!
盾にぶつかったルーの衝撃が重く腕に響き、マークはその衝撃で少し後退りした。
あの頃とは比べ物にもならない大きさに成長したルーだった。
(まあくん♪まあくん♪)
ルーは久しく見るマークに喜びを露わにし、はしゃいでいるのか、その場で空に向かって大きくジャンプした。
着地と同時に地面から振動が伝わってくる。
間一髪、その振動を華麗なステップで回避したカイルは、武器を固く握り直し、その矛先をルーへと向けた。
マークは、ガードしている盾に顔をうずめたまま身動きができないでいた。
(いたいっ、いたいよ、どうしてこのひとはぼくをいじめるの?)
痛みで少し怯んだルーはカイルの方を見た。
(わかった!このひとがいじめっこなんだね?よーし、ぼくがしかえししてやるよ)
ルーはカイルへ向かってズリズリと這いずりだした。
カイルは向かってきたルーをかわし、這いずりが止まった頃合いを見て攻撃を仕掛けた。
一対一の攻防が続く中、マークは遠く離れた所でいまだにガードしたままだった。
「おいっ!何やってんだよっ!!」
カイルの声が届いてないのか、マークは盾の裏側で下に顔を俯いたままだった。
一度は決心をしたものの、成長したルーを目の前にすると、短い間だったがルーと楽しく暮らしていた時の事が走馬灯のように頭をよぎる。
「ルーを攻撃する事なんて、やっぱり僕にはできない・・・」
マークが小さく言った。
マークの言葉がカイルに届く訳もなく、カイルはいまだに攻撃する事ができないマークに苛立ちを隠せなかった。
「攻撃できないんなら、邪魔にならない隅っこで黙って見てろ!!」
カイルは、やはりダメだったかと諦めの溜息をつき、一人攻撃を再開した。
体格が立派なカイルでさえも、その大きな巨体のルーにしてみればちっぽけな人間だった。
傍から見ると、無謀な戦いを挑んでいる一人の若者といったところだろうか。
遠く離れたマークは、盾から少し顔をあげて二人の戦いぶりを見つめた。
激しい戦いの中で、隙を見つけてはルーの脚へ攻撃し、いつしかルーは脚がもたついて地面へ横から倒れてしまった。
カイルは、すかさずルーの腹へ龍撃砲を放った。
大きな火炎とともに凄まじい衝撃を腹に受けたルーは、もがき苦しんだ。
(いたいよー、いたいよー、まあくんたすけてよー)