それいけ!ファンゴ君G (25)

ボクは、究極のドスファンゴになる事を夢見て、一人旅をしている。
ギギ坊の不慮の事故により、重たい気持ちでトボトボと歩いているボクの目に、一際目立つ看板が映った。
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旅の疲れに温泉はいかが?
腰痛、神経痛、打ち身など
温泉まであと50メートル
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こんな所に温泉?
ちょうど凍土を出たばかりで、まだ体が少し冷えている。
これまでの旅で幾度となく高い所から落ちたりして、節々も少し痛い。
悲しい思い出をリセットする為にも、ここは温泉でリフレッシュでもしようか。
ボクは看板の指し示す方向へと歩いた。
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温泉まであと10メートル
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もう少しだ。
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ここを右折して3メートル
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右折すると、高い岩壁に囲まれた海のようなところに出た。
遠くで岩の柱のようなものの上から炎が上がっている。
そして、海面が夕日で赤く染まっていた。
ここが温泉か。
おどろおどろしい雰囲気がまたイイ感じだなw
ボクは、その赤く染まった海へと入ってみた。
・・・なんだっ?
冷たいじゃまいかっ?!
全然温かくないぞっ!
補償汁っ!
「おや?まだ開店前なんだけど、お客さんかい?」
え?ええぇーーっ?!
そこには、炭の塊のような大きなモンスターが海の中からぬっと現れた。
「私は、この温泉宿の女将でグラン・ミラオスっていうのさ。アンタ・・・一匹かい?」
「は・・・はいっ!」
「それじゃ、今から水を温めるからちょっと離れてな」
「はいっ!」
ボクは急いで岸へと上がった。
どうやってあの冷たい海水を温めるんだろう。
すると、女将は翼の先にある筒のようなところから炎を噴出させたかと思うと、海面へ次々にボトっ・・・ジュウとマグマの塊のような物を空から降らせた。
なんということでしょう!
冷たかった海面からは、辺り一面湯けむりが立ち込め、情緒ある温泉郷へと早変わり。
waoっ!
す、凄い!
温泉ってこうやって出来るんだっ!!
ボクは凄まじい光景を見ながら感心した。
「そろそろ丁度いい頃じゃないかねぇ」
女将に促され、ボクは海面へと入っていった。
うん、熱過ぎず、ぬる過ぎず、これはまさに匠の業だ。
「湯加減はどうだい?」
「極楽ですぅ♪」
「そうかい、そうかい、それは良かった」
温泉客がボク一匹とあってか、女将とボクは色々と世間話をし、ボクの旅の話で盛り上がった。
「そうかい、そうかい、アンタも大変だったねぇ」
「ボクは常に最前線に立つ男だからねっ(えっへん」
(じゅるっ)
え?
女将が涎を啜ったような音が?
・・・気のせいか。
「ところで、夕日が海面に反射してなんだかロマンチックな雰囲気の温泉だね」
「・・・この色、夕日の反射だと思うかい?」
「えっ?違うの?」
「あれは・・・昨日だったか一昨日だったかねぇ、一人のハンターが私を狙ってやってきてねぇ、返り討ちにしてやったのさ」
「ま・・・まさか、この色って・・・っ?!」
「さぁ、そろそろアンタもイイ感じに茹で上がったかねぇ」
女将は、ザバーっと海面から上がるとボクへと襲いかかってきた。
「うっ、うわーーーーっ!!」
うわーーーーっ!
わっ・・・わわ・・・あわわっ・・・
ハァハァ・・・アレ?
アレアレ?
気が付くと、ボクは木陰の草むらで、仰向けになりながら、宙に手足をバタつかせながら目が覚めた。
ゆっ、夢か・・・。
ギギ坊のことであんな悪夢を見てしまったんだな。
あぁ、怖い怖いっ。
ボクはブルブルっと身震いした。
ボクは気を取り直し、旅を再開することにした。
すると道中、見覚えのある看板が目に入ってきた。
こっ、こりは・・・!
イザナミかっ?!
いや・・・きっと、ギギ坊があの世からの警告として、ボクにあんな夢を見させたんだ。
南無三・・・。
君の死は無駄にはさせないっ!!
ボクは、その看板を無視して真っ直ぐに歩き続けた。
ボクの飽くなき道の冒険譚はまだまだ続く。