漢目立つ

暑い太陽の日差しが降り注ぐ砂原に、一頭のドボルベルク亜種がいた。
俺は、何物にも動じない男。
鉄の心臓(はあと)を持つ、砂原一の寡黙な男だ。
唯一、見た目が女々しい色合いなのが気に食わん。
稀に大回転攻撃の時に、スタミナ切れで失敗する時もあるが、
「あっれ~っ、失敗しちゃった、テヘペロ♪」
とでも言うと思ったか?
例え失敗したとしても、何事も無かったかのように無言でその場を立ち去ることができる・・・俺はそういう男だ。
広大な砂漠をドボルベルク亜種が散歩をしていると、トコトコと一頭のディアブロスの子供が近寄って来た。
「・・・・・・」
(なんだ、コイツは?ママはどうした?)
「ねぇねぇ、おっちゃん、私のママ知らない?」
「・・・・・・」
(しっ、知らんぞ!それに俺は、まだおっちゃんという歳ではない!)
「うぇ~ん、迷子になっちったぁ~、うぇ~ん」
「・・・・・・」
(ま、まずいな、これではまるで俺が泣かしてるみたいじゃないか!)
ドボルベルク亜種はどうしたものかと、ディアブロスの子供をまじまじと見つめた。
子供のせいか、まだ角も短く、体の色合いも・・・?!
「・・・・・・」
(確か、黒いのって繁殖期の雌だったはず、こっ、こいつ、子供のクセに黒い体してやがる!ったく、最近のガキは皆こうなのか?)
「ねぇ、おっちゃん!なんかして遊ぼうよっ♪」
「・・・・・・」
(この俺が子供と遊ぶ?何の冗談だよ?俺はガキが苦手なんだよ)
「ねぇねぇ、ママから聞いたけどおっちゃん、グルグル回るんだってぇ?見たいっ、ソレ見たーいっ♪」
「・・・・・・」
(なんでこの俺が子供にグルグルして回らなきゃならないんだ?)
「やってくれないの?・・・ぐすっ」
「・・・・・・」
(おっ、おいっ?!泣くな、泣くな!!)
俺はさりげなく辺りを見回した。
運良く、回りには誰もいない。
「・・・い・・・一回だけだぞ」
(くそっ!)
「わーいわーい♪」
ドボルベルク亜種は、子供に当たらないよう、その場でグルグルと大回転をして見せた。
と、その時、ディブロスの母が、子供を探してこの場にやってきた。
「ちょっ・・・何やってるんですか?ウチの娘の前でそんな・・・」
「・・・・・・」
(いや、これは・・・くそっ、おいっ、ガキ!お前から説明しろ)
「おっちゃんがいきなりグルグルしたよー♪」
「・・・・・・」
(こっ、こいつっ?!)
「ウチの娘に変な事教えるの、やめてもらえません?」
「・・・・・・」
(おっ、俺がグルグルするってお前が子供に言うからこんなことに!・・・って、おまえこそ、ガキのクセに繁殖期ってどういう教育してんだよ?)
「さっ、行くわよ!」
「うん♪おっちゃんバイバーイ♪」
「もう、あのおじさんと口聞いたらダメよ!」
「・・・・・・」
(二度と来るな!・・・ったく、だからガキは好かん!!・・・って、だーかーらー!俺はまだおじさんという歳では無いっ!!)
それ以降、ドボルベルク亜種は、見知らぬ子供とは二度と口を聞かない事にした。