不幸のタマゴを生むガーグァ

貧しい村人が、金の卵を産むガチョウのおかげで、億万長者へと成り上がるサクセスストーリーに夢をはせるハンターがいた。
ある日、渓流を探索している時、一羽のガーグァの雛に出会った。
どうやら親鳥とはぐれてしまったようだ。
ハンターは、その雛を持ち帰り、金の卵を産む日を夢見て毎日毎晩、一生懸命に世話をした。
ところが、成長したそのガーグァが産むのは真っ白な卵ばかりで、一向に金の卵を産む気配が無い。
そればかりか、その真っ白な卵を料理で食べた時に限ってお腹を壊したので、これは不幸の卵なのではないかと思い、そのガーグァを元の渓流へと追いやってしまった。
ぐすんっ、ぐすんっ。
ひどいわっ、あのハンターさん。
まだ幼い私を拾い上げておきながら、不幸の卵を産むから帰れって・・・。
ガーグァは悲しみながら渓流をトボトボと歩いた。
私って・・・本当に不幸な卵しか産めないのかな?
ぐすんっ、ううんっ、そんな事ないわ、きっと・・・たまたまよ・・・。
トボトボ歩くガーグァの前に突然、イビルジョーが現れた。
キャーッ!!
驚いたガーグァは、その場に真っ白な卵を産み落とし、近くの草むらへと隠れた。
卵を頬張るイビルジョーは、次第に顔が歪み、短い手をお腹へ当てながら、どこかへと走り去っていった。
草むらから様子を見ていたガーグァ。
や、やっぱり私の卵は・・・不幸の卵なんだわっ!
うわーんっ!!
あまりの悲しみにトテトテと当てもなく走り出すガーグァ。
しばらく走ると、一羽の老婆のガーグァが小川の横に佇んでいた。
「これはこれは、元気なお嬢ちゃんだこと」
老婆はニッコリとガーグァへ話掛けた。
「えっと・・・元気・・・じゃないです・・・(ぐすっ」
「あらまあ、こんな可愛いガーグァちゃんを泣かせるなんて・・・、一体何があったんだい?」
「・・・うわーんっ!!」
ガーグァは、今までの経緯をその老婆へと話した。
「うん、それはたまたまだよ。きっと、食い合わせが悪かったんだろうさ」
「そ、そーなのかなー?」
「うん、いいかい?お嬢ちゃん、この世に不幸の卵を産むガーグァなんていやしないのさ」
「でも・・・えっと・・・私・・・金の卵を一度も産んだ事がないんだよ?」
「あのね、金の卵はね、そうポンポン産める代物じゃないのさ」
「えっ?そーなの?」
「そーさ、そんな毎日毎日金の卵を産んでたら、今頃私らは乱獲されて絶滅してるさ」
ガーグァは少しホッとした。
「お嬢ちゃんは今まで100個以上の卵を産んだのかえ?」
「ううんっ、まだ・・・えっと・・・たぶん・・・30個ぐらい・・・」
「それじゃあ、まだまださ。金の卵の確率なんて一桁さ」
ガーグァの顔色がパァーっと明るくなった。
「そーなんだー!なんだーっ、てっきり私は・・・」
すっかり元気を取り戻したガーグァに老婆は言った。
「今はこの婆はすっかり卵が産めなくなったけど、まだまだ若いお嬢ちゃんなら、卵で商売もできるさ」
「えっと・・・それって・・・?」
老婆から商売のノウハウをしっかりと聞き取るガーグァ。
後に、渓流の一角に「タマゴ占い始めました」の看板が掲げられた。