私がヒロインよ!

「ではこれより、オーディションを開始します!」
司会者のマイクが鳴り響く。
来年公開予定の映画「俺が主人公だ!」のヒロイン役を決める公開オーディションが、この陸の闘技場で開催された。
最終選考まで残った5名のヒロイン候補達。
審査員は、トリプル主人公のナルガクルガ、リオレウス、ジンオウガに加え、友情出演のブラキディオスの計4名。
会場からは、ヒロイン候補ではなく、審査員に対しての黄色い声援が飛び交う。
「キャーッ!ジンオウガ様ステキーッ!!」
「毛で見えないけど、きっとお腹は8つに割れてるわよ!」
「キャーッ!ナルガクルガ様ステキーッ!!」
「シュッとしたあの細身のラインがタマラナイわ!」
「キャーッ!リオレウス様ステキーッ!!」
「あの王の風格がシビレルわ!」
声援に対し、審査員達は会場へ向けてにこやかに手を振る。
(あれ?俺だけ声援ナッシング?)
ブラキディオスも取り敢えずは手を振った。
「最終選考では、各自それぞれ特技を披露して頂きます。ではまず、最初の候補者、リオレイアさんです!」
司会者に促され、リオレイアが空から会場の真ん中へと優雅に舞い降りた。
「えー、コホンっ。私、孤島で女王をしているリオレイアと申します。特技は、3つの的に連続でファイアーボールを当てる事です」
会場に用意された3つの的に火の玉を無事命中させたリオレイアは、礼儀正しく一礼をすると、審査員のリオレウスへウインクをした。
すると、会場はブーイングの嵐に見舞われた。
審査員席では、ジンオウガがリオレウスへそっと耳打ちをする。
「おいおい、アレ、お前の彼女かよ?」
「ちっ、ちげーよ!た、ただの友達だよ・・・」
「ふーん(ニヤニヤ」
「えーでは、次の候補者、ディアブロス亜種さんです!」
ドドドッという地響きと共に、地中からディアブロス亜種が派手に登場した。
「砂原から来ました、まだまだ若い子には負けられません!繁殖期真っ盛りのディアブロス亜種です。特技は、地中からの一点集中スクリュージャンプです」
空中に用意された1つの的に、地中から見事なスクリュージャンプで命中したディアブロス亜種は礼儀正しく一礼をした。
審査員席では、ジンオウガがナルガクルガへそっと耳打ちをする。
「繁殖期だけあって、妖艶な感じだな。特にあの内腿の肉付き、ゾクゾクするな」
「君ってやつは・・・(溜息」
「えーでは、次の候補者、ギギネブラさんです!」
地べたを這いずりながら、ギギネブラが登場した。
「はるばる凍土からやって来ましたギギネブラです。えーと、背中の卵は気にしないで下さいね。保育園の空きが無かったもので・・・。特技は、天井を歩けるこ・・・ここ天井がありませんね。・・・では、毒爆弾精製をします!」
背中に卵を乗せたままギギネブラは、その場で紫色の毒爆弾を産み落とした。
毒爆弾の爆発と同時に、爆風と毒の霧の中でギギネブラは一礼をし、その場はちょっとしたイリュージョンと化した。
審査員席では、ジンオウガがぼそっと一言呟いた。
「ちっ、子持ちかよっ」
「えーでは、次の候補者、クルペッコさんです!」
翼を大きく広げ、滑稽なスキップとともにクルペッコが登場した。
「私は孤島からやって来ましたクルペッコです。特技は・・・ソロ合唱です!」
観客席からは一際大きな声の声援が聞こえた。
「あなたならやれるハズよ!特訓の成果を見せてやりなさいっ!」
声援を受けたクルペッコは軽く頷き、ゆっくりと大きく深呼吸した。
ブピッ♪
すみません、すみませんと何度も頭を下げ、クルペッコは再度深呼吸をした。
ブプッ♪
またもや失敗に終わったクルペッコは、司会者から「もういいから下がって下さい」と言われ、シュンと項垂れながら一礼をした。
審査員席のブラキディオスは思った。
(嫌いじゃないな♪)
「えーでは、最後の候補者、ガーグァさんです!」
トテトテと小走りで登場したガーグァ。
中央付近でドテッと転んでしまい、会場を失笑の渦にしてしまった。
「あっ、えっと、私は渓流出身のガーグァです。えっと、えっと、特技は、タマゴ占いですっ。金の卵が出たら大当たりですっ♪」
ガーグァは、司会者へ自分を驚かして欲しいと頼みました。
司会者はガーグァの背後に回り、後ろから「ワッ!!」と脅かすと、ガーグァはビックリして卵を1つ産み落とした。
しかし、それは何の変哲もない真っ白な卵だった。
「司会者さん、ハッズレ~♪」
司会者は困ったように頭を掻いた。
「ゴホンっ。候補者全てが揃った所で、審査に入りたいと思います。審査員の方達は協議に入って下さい」
しばらくして協議が終了し、ヒロインの結果発表がなされる。
ドゥードルドルドルッ♪
「では「俺が主人公だ!」のヒロインは・・・ガーグァさんですっ!!」
会場からはパチパチとまばらな拍手で迎えられるガーグァ。
「えーでは、審査員長のブラキディオスさんへ総評を聞いてみたいと思います」
司会者は、ブラキディオスへマイクを渡した。
「えー、まー、途中協議が難攻しましたが、最後にはあの天真爛漫さが今回の役どころにピッタリじゃないかというところで全員一致で落ち着きました」
ブラキディオスが司会者へマイクを返す。
「えーでは、審査員長のブラキディオスさんから、見事ヒロインの座をゲットしたガーグァさんへ粗品が手渡されます」
ガーグァへ粗品を手渡すところで、パシャッパシャッと記者達のフラッシュを浴びながら、ブラキディオスはにこやかな表情を変えずにガーグァへそっと耳打ちした。
「あいつら肉食系だから気を付けろよ」
えっ?
ええっ?
えっと、えっと、それってどっちの意味だろ???
ガーグァは色々と妄想が膨らむ中、頭が混乱してしまい、ポトッとその場に卵を産み落としてしまった。
後日、金の卵と鳩が豆鉄砲を喰らったような顔付きのガーグァが誌面を飾った。