それいけ!ファンゴ君(1)

ボクは、ブルファンゴとしてこの世に生を受けた。
今ボクの目の前で、我先にとママのおっぱいを吸っているのは、僕と一緒に生まれた兄弟達だ。
フンっ、ガキめ。
ボクは自我が目覚めた頃から、一つの夢を追いかけるようになった。
それは、偉大なるドスファンゴになる事だ!!
大きな巨体、そして、天にも届きそうな立派な牙。
いくら大型のモンスターといえど、ドスファンゴにはそう易々と手出しは出来ない。
あの牙の一撃で返り討ちに合うからだ。
いつかそんなドスファンゴになる野望を秘めたボクは、いち早く乳離れをした。
だが、そんな事では大きくなれないとママはボクを叱るが、大きくなるには乳だけ吸ってたんじゃダメなんだ。
ボクは家族の反対を押し切って、巣立ちをする事を決意した。
世界中を旅して色んな物を食って、色んな経験をして、どんなモンスターに襲われても怯まない、そんな立派なドスファンゴになるんだっ!
ボクは手始めに、沼地を目指して旅立った。
途中、変なキノコを食べてお腹を壊した事もあったが、これもまた良い経験となった。
まだお腹が少しゴロゴロするけど、げどく草を食べたからもう少ししたら良くなるはずだ。
そんな時、ボクはカム・オルガロンとノノ・オルガロンに出くわしてしまった。
いつもは鼻が利く僕も、お腹の調子が悪い為か少し気付くのが遅かった。
しかし、奴らはまだボクに気付いていない。
そして、こちらは風下。
天はボクに味方したようだ。
向こう側には、あの犬っころのいるエリアを通るのが一番の近道だった。
ボクは、抜き足忍び足でそっと静かに壁沿いに通り過ぎようとした。
ムズ・・・ムズズ・・・
ま、まずい。
アレルギー性鼻炎のせいで、鼻がムズムズしてきた。
ボクは懸命に堪えながら、足を休ませる事なく進んだ。
「ブフーッ!!」
・・・やっべー。
犬っころ共がこっちを見てやがる。
よしっ、ここは戦略的撤退と行くしかないっ。
逃げろーーーーっ!
ボクを追い駆けてきたのは、ノノ一匹だけだった。
カムの野郎は、ボク達の追い駆けっこをただニヨニヨと見ていた。
チキショーーっ!!
バカにしやがって。
こんな所でやられるボクじゃない!
足の速さは、兄弟一なんだぞ!
こんな犬っころに負けてなるもんかーーっ!
ボクの超ミラクル猪突猛進を見せてやるーっ!
うおぉぉぉぉぉーーーーっ!!
ボクのスーパー駆け足に追い付けないノノに業を煮やしたのか、カムが反対側から挟み撃ちの形で追い駆けっこに参戦した。
マジかよっっ!!
と、焦り始めた時、運悪く、武器を持った人間達がやって来た。
おぃおぃおぃっ、犬っころとハンターと三すくみじゃないかっ!
もはやこれまでか?
将来、偉大なるドスファンゴになる事を約束されたこのボクが、旅立った瞬間、まだ何の経験値も積まずにこんな所で無駄死にしてしまうのか?
一瞬だが、今まで一緒に過ごした家族、そしてこれから起こり得るであろう旅路が走馬灯のようにグルグルと頭の中をよぎった。
うんっ。
何かが吹っ切れた。
よし、こうなったらまずは弱そうなハンター達からやっつけてやる。
ボクのスーパー超ミラクル突進撃を受けるがいいっ!
ボクは目をつぶりながら人間達に向かって一直線に突進をした。
スカっ・・・
・・・っれ?
ハンター達はボクの超突進をヒラリと避け、このボクには見向きもせず、真っ直ぐに犬っころに向かって行った。
ま、まぁ、妥当と言えば妥当な判断だな。
いっそのこと、共倒れになってくれないかなぁ。
この隙にボクは、近くの茂みへと身を隠し、事の顛末を見守る事にした。
ハンター達は多少苦戦しながらも、見事、犬っころをやっつけた。
ボクは思った。
ざまぁwwwwwww
将来、偉大なるドスファンゴになる事を約束されたこのボクを食おうとするからだ。
やはり天はボクに味方したようだ。
あっ、お腹のゴロゴロ治った。
よしっ、次に行こう。
ボクの飽くなき道への冒険譚は、まだまだ始まったばかりだ。