響き渡るは静寂 5

数日後、まるで日課のように沼地のあちらこちらをただ一つの匂いを求めて徘徊するノノ。
毒沼が溢れる辺りに来ると、今まで追い求めていたあの憎きハンターの匂いがしてきた。
意識を鼻に集中させ、その匂いを辿って行くとまぎれもしないあのハンターの姿が見えてきた。
「ウウウウッ」
白い牙を剥き出しに、ノノは唸らずにはいられなかった。
そのハンターはディモだった。
色々な気配、音、匂い、五感をフルに使ってディモは辺りを警戒していた。
狩りの時はいつも4人で行っていたが、今回のディモは一人だった。
茂みが少ないその場所では体勢を低くしても意味は無いのだが、ノノは背を低くしながらディモへとゆっくり近づいて行った。
普通に突っ立っているような時なら察知できないが、ほんの僅かな異変でもあればと警戒していたディモは、何かが近づいてくるような気配を感じ取って、後ろを振り向いた。
そこには、まさに獲物を狩ろうとしているノノの姿があった。
いつもはカムとノノのツガイで行動しているはずだが、そこにはノノの姿しか見受けられない。
「・・・という事は・・・やはりあの時の?!」
ある程度は懸念していたディモだった。
カムを殺られ、残されたノノはきっとディモ達を恨んでいるに違いない。
この一帯に足を運ぶ関係の無い人達はおろか、メイに何かあったらと思うと、ディモはノノを殺るしかないと決意し、背中からその大きな剣を降ろして両手に構えた。
ノノは大きく咆哮すると、体毛を赤く染め、敵意丸出しのディモへ向かって、大地を脚で思い切り蹴って飛び掛かっていった。
ノノの初撃を大剣でガードしたディモは、すぐ様ノノへと向きを直す。
あと一歩というところでディモにガードされたその瞬間、ディモからあの女の匂いがした。
やはり知り合いだったのか?
あの時殺っていれば・・・
後悔しても遅い。
今は目の前のこの男に集中しなければ。
ノノは新たな決意をしたように、ディモに向かって激しく唸る。
今度はディモからの重い一撃がノノを襲う。
ヒラリとノノはその刃を交わし、ディモの後ろ側へと跳躍し、すぐにまたディモに向かって飛び掛かった。
剣が重すぎるせいか、態勢を直すのが一瞬遅れたディモは、左肩へと浅いが傷を負ってしまった。
「・・・っ!!」
気を取り直し、ノノへと斬りかかるディモ。
とその時、
「待って!!」
メイが現れた。