響き渡るは静寂 4

「よぉっ、メイいるか?」
男は勢いよくドアを開けて入って来た。
「ちょっと、まだ診療時間中よ?静かに入って来てって何度言ったら・・・」
女は村で医者をしていた。
「あぁ、スマンスマン、でも誰も患者いねぇじゃねぇか」
男は背中に携えた大きな剣を取り外し、椅子に腰掛けた。
「これ見ろよ、注文していた剣がやっと出来たんだ」
そう言うと男は、手にした大剣を眺めた。
薄いグレーの装飾毛が施されている立派な剣だった。
「私はそういうのは興味が無いって何度言ったら・・・」
「はいはい、メイは殺生とは一切関わりのない女医様ですからねぇ」
「ディモったら・・・」
メイは、タンポポの葉で作った自家製の熱い茶をディモへと淹れた。
「熱っ、そして苦っ」
「タンポポの葉はね、利尿作用があってむくみにも良いし、血液の循環にも・・・」
「はいはい、要するに体に良いんですね?女医様っ」
「もう、ディモったら・・・」
ディモというこの男、メイの恋人だった。
「あっ、そうだ、この間ね、ゲキレツ毒テングを取りに沼地へ行ったの」
メイは、調合法によっては妙薬となるゲキレツ毒テングを取りに沼地へと採取に行き、そこで出会ったノノの事をディモへ話した。
「お前、物好きだなぁ・・・て言うか、危ねぇじゃねぇか!!採取に行く時は一緒に行ってやるって何度言えば・・・」
メイはプッと吹き出した。
「私の口癖、移っちゃったのね」
ハッと気付いたディモはメイと2人大笑いした。
「生物というのはね、意外とこちらの思っている事や考えている事を察知できるものなのよ。だから敵意が無い事を伝えられたら・・・」
「メイ」
急に真剣な顔に戻ったディモは、メイの話を途中で遮った。
「世の中、そんな甘いモンじゃねぇんだ。ホント、何が出てくるか分かんねぇから、キノコ採りに行く時は必ず俺に声掛けてくれ」
「だから、ただのキノコじゃないって何度言ったら・・・」
ディモの真剣な顔は変わらなかった。
「う、うん、分かったわ」