悪達のハーモニー

地底洞窟の奥深い場所で、ゲリョスとネルスキュラが両者睨みあいのさなか、一色触発の状態にあった。
ネルスキュラは大好物のゲリョスから目線を逸らさず、ズズッと滴り落ちそうなヨダレを啜った。
「うわっ、きったねーっ!おまえ、今、ヨダレ啜っただろ?」
「は?啜ってねーし!」
ゲリョスは、ペッと紫色の毒液をネルスキュラの目の前に吐いた。
「おわっと、きったねーなっ!てめーこそクソ痰吐くなやっ!」
「は?痰じゃねーし!」
ネルスキュラは、体を伸びあがらせると腹を前方へ向けて尻から毒液をゲリョスの目の前へと噴射した。
「うわっ、きったねーっ!おまえ、腹壊してんのかっ?」
「は?腹壊してねーし!」
ゲリョスは、尻尾をゴムのように伸ばしながらその場で右回転をした。
「へっ、なんだ?そのクソターンはっ?ここまで届かねーし!」
「は?別におまえに届かせようとは思ってねーし!」
ネルスキュラは、軽快に横へとステップを踏んだ。
「ふっ、なんだ?そのヘッポコステップは?」
「は?てめーには出来ねー芸当だし!」
ゲリョスは、頭を持ち上げるとバチバチと数回トサカを鳴らして閃光を発した。
「へんっ・・・そんなの全然・・・効かねーし!」
ネルスキュラはピヨピヨと小さなイャンクックを頭の回りに羽ばたかせながら、頭がクラクラとしていた。
「ふっ、効いてんじゃねーかっ!」
ネルスキュラは目まいをしながらも、尻から糸を放ち、ゲリョスを見事に拘束させた。
「ふん・・・拘束したつもりだろーが、全然ユルユルだし!」
ゲリョスはその糸を振り解こうともがいたが、その糸はゲリョスの羽へと絡みついて全く解くことができなかった。
「へっ、効いてんじゃねーかっ!」
依然として頭がクラクラしているネルスキュラと、糸で拘束されて身動きが取れないゲリョス。
ネルスキュラの目まいが治ったと同時に、ゲリョスは自力で糸の拘束を解いた。
「ハァハァ・・・」
「ウゥッ・・・」
「・・・明日こそ、てめーを天井から吊るしてやるからなっ!」
「・・・できるものならやってみろっ!今度こそ返り討ちにしてやっからなっ!」
二匹は翌日の決戦を約束すると、それぞれのねぐらへと帰って行った。