沈黙、公然、傭兵達の調べ

ハンター達がモンスターを狩る事で、残されたモンスターの子供達は皆、孤児となってしまう。
親を失ったモンスターの子供達は、そのほとんどが他の捕食者の餌食になるか、衰弱していくかのどちらかであった。
そんな現状を嘆いた一頭の心優しいモンスターが、そういった孤児達を集めて世話をし、強く逞しく生きていく術を子供達に教える為に、モンハピ孤児院を設立した。
孤児院で育ったモンスターの子供達は、通常、親離れする時期を迎えると、皆、孤児院を卒業していくか、または、そこに留まって新しく迎える子供達の世話の手伝いをしたりしていた。
今日は、ゴア・マガラがモンハピ孤児院を卒業し、旅立っていった。
俺は、卒業して旅立つ方を選択した。
この世界のどこかに、俺がいるべき場所を求めて・・・。
そんな俺が最初に見付けたのは、様々なモンスターが集い、チームを組んで、依頼をこなす傭兵集団のような場所だった。
そこにいる連中は、ごろつきやら、腹にイチモツを抱える輩がそのほとんどだった。
また、ここでは誰しもが他者に対し、余計な詮索をせずに淡々と依頼をこなす、殺伐としたその雰囲気が今の俺には心地よかった。
ある日、新しい依頼をこなす為、俺はチームを探す事になった。
この危険な依頼には、俺の作戦だと4頭は必要だった。
俺は、残り3頭をどうにか集める事ができた。
空中からの偵察に長けているアルセルタス、地中からの奇襲が得意なガララアジャラ、そして肉弾戦に強いテツカブラ。
皆、この道が長いベテラン勢だ。
この中では俺が一番若く、またこの仕事もまだ慣れていない新モンだった。
その依頼にある目的の場所までは少し遠い。
皆、沈黙を守りながら目的地まで4頭ぞろぞろと歩いていた。
その沈黙を破ったのは、最年長で一番この仕事を長くやっている、通称「隊長」と呼ばれていたテツカブラだった。
「おまえ、まだ新モンだろ、どこ出身だ?」
・・・え?
互いに詮索するのは、ここではタブーだったんじゃ・・・?!
「モンハピ孤児院・・・だ」
俺が答えると、少しの沈黙が流れた。
今までもそうだった。
俺の出身を聞いた奴らは、決まって憐みか蔑むような眼つきで俺を見ていた。
きっと、こいつらもそうだろう。
「・・・ぶ・・・ぶっ・・・ぶわっはっはっはーーーーっ!」
「くすくすくす」
「くっくっくっ」
ふっ・・・笑い者にされるのも慣れていた。
別に・・・どうってことはない。
「誰もそこまで聞いてねーよ、ぶはははっ」
「どこの地方から来たかって聞いてたんだよ、ぶぁーかっ」
「無粋な奴だな、ったく・・・くっくっくっ」
・・・っ?
そ、そうだったのか・・・。
「い、遺跡平原からだ」
「へー、そうか」
「俺は、地底洞窟出身さ」
「俺は原生林だ、よろしく!」
なんか、調子狂ったな・・・。
「ところで・・・おまえ、孤児院出身って事で、俺達が同情したり蔑んだりすると思ったか?そんな事しねーよ、ここの皆はな、おまえなんかよりもハードな人生を生きてきた輩ばっかりなんだよ。だから誰も余計な詮索なんてしねーのさ」
「何もおまえだけが特別って訳じゃないんだ」
「そうさ、そうさ、飯が出るだけ、おまえなんてまだいい方だぞ?」
・・・きっと、ここではそうなんだろうな。
俺はまだ・・・幸せな方だったのかもしれない。
「ところでよ、やっぱアレか?あだ名とかで呼び合ったりするワケ?」
「飯、旨かったか?」
・・・・・・?
これって・・・思い切り詮索してんじゃねぇかっ?
「チームを組んだからには、俺らは隠し事一切無しだ」
「そうそう、信頼関係が壊れるからね。詮索はしないが、隠し事は一切無し!これが我がチームの結束力!」
・・・説得力に欠ける台詞だな。
というより、こんなにフレンドリーな奴らだったのか?
「なあ、そこにもやっぱ魔王とかいたのか?」
・・・た、隊長もっ???
俺達は、依頼を完了した頃には家族同然の仲になっていた。
なんだかくすぐったい感じがしたが、またそのくすぐったさが・・・・案外、悪くない。
俺は、自分の居場所が見付かったような気がした。