釣り名人の憂鬱

水没林の穏やかに流れる川の底、少し濁ってはいるがよく目を凝らすと、川底には幾多の水草が生え、壁際には所々赤や青の鉱石が地中よりはみ出している。
ここにも水流でユラユラと揺れながら赤い水草が生えている。
(ふふふっ、こうやって擬態していると向こうからカモがやってくるのよね♪)
その赤い水草の正体は、チャナガブルだった。
チャナガブルは、獲物を狩猟する際、地中に潜ってヒゲを水草のように見せ掛け、それに寄ってくる獲物に食い付く。
(ふふふっ、この狩猟法の成功率はほぼ100%♪)
(あと1回で100%確定だわ♪)
(早く美味しい獲物がやってこないかしら♪)
チャナガブルは、辛抱強く地中で待ち伏せた。
すると突然、ザバーンと大きな音を立てて何かが陸地よりこの水中へ勢いよく飛び込んできた。
(え?何?何なの??)
地中から上を見上げると、数人のハンターが水中を泳いでいる。
(・・・このままじっとしてたら、きっと私に気付かずに向こうへ行くに決まってるわ♪ふふふっ)
チャナガブルは、ハンター達が通り過ぎるのを待った。
しかし、ハンターの1人がおもむろに、チャナガブルが擬態していた水草に近寄ってきた。
そして、なんと擬態している水草から何かを採取しようとしている。
シュゴッ、シュゴッ、シュゴッ
(ちょっ・・・痛っ・・・何やってんのコイツら??)
水草から採取したハンターが、手にした灯魚竜のヒゲを見て大はしゃぎをし、他のハンター達を手招いている。
(えっ・・・ちょっ・・・困るわ・・・)
寄って来た他のハンター達も、我先にとこぞってその水草から採取をし始めた。
シュゴッ、シュゴッ、シュゴッ
シュゴッ、シュゴッ、シュゴッ
シュゴッ、シュゴッ、シュゴッ
(痛っ・・・痛たたたた・・・・もう怒った!!)
ザバーッ!!
チャナガブルは、我慢しきれずに地中から飛び出した。
「ちょっとアンタ達ぃーー!!」
地中からの急襲で驚いたハンター達は、採取目的だったので軽装で来てしまったせいか、戦闘を回避するべくその場をすぐに泳ぎ去って行った。
「ふんっ!ヘタレハンターめっ!!」
チャナガブルは、改めて痛めたヒゲを見ると、6本あったヒゲがなんと!僅か2本しか残っていなかった。
「やだっ!何コレっ?超カッコ悪ぅ~っ!!」
「しかも、これで連勝ストップしたじゃない!!」
「・・・また1から数え直しだわ・・・っはーっ・・・」
チャナガブルは、ブクブクと気泡を立てながらまた地中へと潜った。