ラングロトラが大変です×2

「かっ、会長!大変です!!」
砂原町内会の会長を務めるドボルベルク亜種の元に、副会長であるボルボロスが慌ててやってきた。
「何が大変なのかね?」
「ら、ラングロトラが大変です×2!!」
副会長は、息を切らしながら言った。
「ラングロトラが大変なのは分かるが、その×2ってのは何なのかね?」
「とっ、取り敢えず、現場へ一緒に来て下さい!」
会長は重たい腰を上げると、その場でグルグルと回り始め、副会長の向かっている方向へと大ジャンプをした。
そして、またその場でグルグルと回ると、ズサーッと今度はあらぬ方向へ滑り込みをしてしまい、大ジャンプは失敗に終わった。
「会長!もう歳なんですから、素直に走っていきましょうよ!」
副会長の言う通り、ワシももうそんな歳か・・・。
どうりで最近、大ジャンプのキレが悪いと思ってはいたが・・・。
副会長の案内で、現場へ到着した。
そこには、ラングロトラが二頭おり、互いの舌が複雑に絡み合ったまま、今にも一触即発の勢いだった。
「なんと!互いの舌が絡んでおるのか?副会長、解いてやりなさい」
「い、いやぁ、私の指はこんなですから・・・」
副会長は、その太い指を申し訳なさそうに会長へかざしてみせた。
「ふむ・・・ワシの指もアレだしな・・・誰か手先が器用なヤツはいないのかね?」
「あっ、ドスジャギィだったら指先も細いし器用そうですね!」
「ふむ、ではドスジャギィを呼んできたまえ」
「では、呼んで参ります!」
副会長は、地面へ潜り始めるとドスジャギィを探しに出掛けた。
「ちょっといい加減にしてよ!」
「なんだと?!もしかしてだけど、絡まったフリして誘ってるんじゃないの?」
「なっ!なんですってぇ?!」
「そういうことだろ?」
「なっ、な・・・?!」
舌の絡み合ったラングロトラ達は、ほぼ限界にきているようだった。
「これこれ、よしなさい」
会長が割って入ったおかげで、二頭は互いにソッポを向き、一時停戦となった。
副会長がドスジャギィを探しに行ってから、早一時間が過ぎようとしていた。
会長は、待ちくたびれたせいか、こっくりこっくりと船を漕ぎ始めたその時、そこへベリオロス亜種がやってきた。
「あら、皆さんお揃いで何かあったんですか?」
鼻提灯が破裂した勢いで飛び起きた会長は、目の前のラングロトラ達の事情を説明した。
「あらまぁ、それは大変っ!よければ私が解いてあげましょうか?」
「それは有り難い申し出。しかしながら、奥さんの指はとても・・・」
「これでも?」
ベリオロス亜種は、短い指先にキランと光り輝く鋭い爪を会長へ掲げた。
「おぉぉ!それならば!」
会長は、ベリオロス亜種へラングロトラの舌を解いてもらうことにした。
「間違って、プスッと刺しちゃったらごめんなさいね」
二頭のラングロトラは、ブルブルと震えあがり、双方ともに目をつぶった。
ほんの数分で、複雑に絡んでいた舌が無事に解けた。
「あぁ、よかった、よかった。奥さん、助かりましたよ」
会長は、ベリオロス亜種へ礼を言うと、ラングロトラ達にも礼を言うよう促した。
「それじゃまた何かあれば、いつでも呼んで下さいな」
ベリオロス亜種は、そう言うと何処へ飛んで行った。
「しかし、君達ね・・・」
会長がラングロトラ達に説教しようとすると、ラングロトラ達の雰囲気が先程と打って変わって違うようだった。
「さっきは、ごめんなさいね、あんな事を言って・・・」
「いや、こっちこそごめんよ・・・」
(吊り橋効果・・・ってやつなのかね、やれやれ)
ラングロトラ達は、揃って会長へ礼を言うと、二頭一緒にどこかへと仲良く立ち去って行った。
(さてと・・・ワシも帰るとするかの)
会長は何かを忘れている気がしたが、何だったのか歳のせいか思い出せずに、そのまま帰って行った。
一方、ドスジャギィをようやく探し出した副会長は、ラングロトラの舌を解いてくれるようドスジャギィへ交渉中だった。
「どうして俺があんなヤツらを助けないとダメなんだよ」
「いやぁ、ですから、ここは会長の顔を立てると思って・・・」
「アイツらこの前、俺に向かってゴロゴロと転がってぶつかったクセに謝りもしなかったんだぜ?」
「いやぁ、ですから、それについては舌が解けたら謝罪させますんで、ここは一つ・・・」
「いんや、俺は絶対にアイツらを許さないねっ」
「いやぁ、ですから・・・」
副会長の無駄な交渉は続く。