特製注意!?

俺は、ふらっとモンスター。
ぶらり一匹旅が好きなルドロスだ。
特に目的がある訳でも無く、その日その日で気の向くまま、放浪の旅を続けている。
一番の楽しみは、ご当地でしか食べられない料理だ。
今日は、しばらく留守にしていた地元である孤島へと戻ってきた。
しばらく見ない内に、俺の知らない店があるな。
『お食事処 どすっと』
『当店オリジナルのおすすめメニューあり!!』
ほぉ、オリジナルメニュー・・・か。
これは一応、おさえておく必要があるな。
自分で言うのもなんだが、俺の舌はゴッドベロだと自負している。
今まで色んな所で色んな料理を食べてきたから、味には結構うるさい方だ。
暖簾をくぐり、俺は店の中へと入った。
少し手狭な感じはするが、捻じりハチマキをした、いかにも店主らしいドスジャギィがカウンターの中にいた。
「おっ?!いらっしゃいっ!!」
店主の第一印象は、一件濃いゲジマユで怖そうなオヤジに見えるが、話をしてみると意外と気さくで、客の相談事や愚痴を親身に聞いたり、職人を思わせる美味しい料理を提供したり、大衆の皆から慕われているおやっさん的な感じがした。
俺はカウンターに座った。
こういう店では、カウンターに座るのが定石だ。
カウンター越しの調理場や、店主の料理さばきなどが見えるからな。
何と言っても一番は、店主の人柄が分かりやすい特等席でもある。
「お客さん、初めてだね?何にする?」
「表の看板にあったオリジナルメニューって何ですか?」
「あぁ、あれね?特製ココットライスだよ」
「へぇ、じゃその特製ココットライスと・・・キングターキーとタンジアビールを頼むよ」
「あいよっ!」
店主はまず先に、冷えたタンジアビールとツマミのキングターキーを俺に提供すると、テキパキと調理に取り掛かった。
特製ココットライス・・・か。
ココットライス自体はどこでも食べられる超一般的な料理だが、オリジナルという響きが俺の心をくすぐった。
ターキーを食べ終えた頃、特製ココットライスが出てきた。
見た感じは、どこにでもあるココットライスだ。
俺はスプーンで一口目を頬張った。
うっ・・・こ・・・これは・・・っ?!
「どうだい?ウチのココットライス、美味いだろ?」
店主は自信に満ち溢れた顔で俺に聞いてきた。
「・・・はっ・・・はいっ・・・美味しいです」
取り敢えず俺はそう答えたが、ふ・・・普通のココットライスだ!・・・と俺の舌がそう言っている。
いや、まだ一口しか食べてないからかもしれない。
もしかして中にオリジナルな秘密が隠されているのかもしれない。
俺は、底の方からスプーンですくって食べてみた。
器の端、真ん中、どこをどうすくって食べてみても・・・何の変哲も無い、普通のココットライスだ。
どの辺りが特製なのか?!
俺は店主へ今一度問うてみたかった。
が、旅先ならいざ知れず、地元であるこの店で難癖を付けても仕方がない。
当店オリジナルの特製ココットライス
オリジナル・・・特製・・・果たしてこの単語に意味はあったのだろうか?
ただ料理名の前に付ければ良いってものではないハズだ。
俺は勇気を振り絞って、店主へとさりげなく聞いてみることにした。
「このココットライス・・・すごく美味しいんですけど、何か特別な物でも入ってるんですか?」
「おっ?そこを聞いてくるとは・・・お客さん、通だねー、でもこれは・・・企業秘密ってヤツでそう簡単には教えられないのさ」
まぁ、そう言うだろうよ。
別に変わった物も何も入っていないんだろ?
そういえば、昼時だというのに店内はガラガラだ。
・・・つまり、そういうことか。