それいけ!ファンゴ君(完)

ボクは、偉大なるドスファンゴになる事を夢見て、一人旅をしている。
隙間で縮こまっているボクに、「もう大丈夫よ」とスノウホワイトちゃんの光の声が差し込んだ。
「さっきの・・・すごい破壊力だったね」
ボクは彼女を称賛した。
ふふっ♪と、ハニカミ王女の如くはにかむ彼女もまた、あのハンター同様、ボクの心を鷲掴みにして離さなかった。
ドスンっ!!
鈍い音とともに衝撃が船に響き渡った。
なんだっ?!
「・・・っ、シャンティエンが来たわっ!」
シャン・・・なんだって?!
「あなたはまだここに隠れていて!」
あの笑顔溢れる可愛らしいスノウホワイトちゃんの顔が、一瞬で鋭く尖ったナイフのように、戦女神を思わせる表情に変わった。
「はっ、はいっ!!」
ボクは隙間から甲板を見守ることにした。
シャン・・・なんだっけ?
シャンシャンとハンター達との壮絶な戦いの合間に、スノウホワイトちゃんの他にも数匹のプーギーが僅かな物資を、それぞれの飼い主であるハンター達へと届けていた。
うぅ、スノウホワイトちゃん、危ないよぅ。
あぁっ、上からシャンシャンがっ・・・!
・・・ふぅっ、危なかった。
ボクは気が気ではないぐらいに、彼女だけを応援した。
シャンシャンとの戦いに、ハンター達は苦戦を強いられているようだった。
かなりの時間が経った頃、ハンター達の猛攻撃で深手を負ったシャンシャンは、空高く逃げて行った。
討伐こそはできなかったようだが、スノウホワイトちゃんが無傷だったのがせめてもの救いだ。
ふらふらと疲れ切った体で近寄ってきたスノウホワイトちゃん。
「・・・思った以上に時間がかかっちゃったから・・・船の燃料が足りなくなっちゃって・・・近くの異国に一度降りるみたいよ」
倒れ込んできたスノウホワイトちゃんを、ボクはしっかりと支えた。
「だっ、大丈夫かいっ?!」
「・・・うん、たぶん・・・大丈夫・・・」
そう言うと、スノウホワイトちゃんはボクの腕の中で、しばしの眠りについた。
ガガガガガ・・・・。
どうやら、船が着陸したようだ。
少し元気を取り戻したスノウホワイトちゃん。
「ここでお別れだけど・・・元気でね」
うぅぅぅっ・・・、別れがこんなにツラいなんて。
こんなことなら、いっそ誰かのプーギーとして生きていくという選択肢もあるだろうけど・・・。
ボクは溢れ出そうな涙を必死に堪え、精一杯の虚栄を張った。
「またどこかで会おうっ!アディオスっっ!!(スチャっ」
ボクは、ハンター達に見付からないよう、特攻で異国の地へと降り立った。
新しくも、未知なる第一歩が始まる。
見慣れぬ風景。
嗅いだことのない匂い。
この先に待つものは何か?
新しい出会い・・・そして、別れ。
更なる強大な敵。
待ってろっ!おまいらっ!!
ボクは期待と夢をその背中に乗せて、一歩一歩、大地を踏みしめるとともに、いつの間にかボクの歩みは加速していった。
ボクのトップスピードにやっとの思いでしがみ付いていたアフロが、突然の突風で空高く舞い上がっていった。
風が囁いている・・・。
どうやらこのボクを歓迎しているようだ。
ボクはもらった服をその場で潔く脱ぎ捨てた。
それじゃぁ、行こうかっ!
ボクは、更なるエターナルダッシュで新境地(フロンティア)を掛け抜ける。
ボクの飽くなき道の冒険譚は・・・まだまだ終わらないっ(キリっ