それいけ!ファンゴ君(23)

ボクは、偉大なるドスファンゴになる事を夢見て、一人旅をしている。
ボクは森丘へと辿り着いた。
そこにはアプトノスの群れが悠々と暮らしていた。
平和そうだな。
そういえば、モスが空の王と陸の女王がいるって言ってたな。
どうせ、空の王って糞鳥かなんかだろ。
・・・となると陸の女王はアプトノスか?ww
そんな悠長な事を考えていたボクは、後に後悔するとも知らずに呑気に歩いていた。
すると、バサバサバサっと羽音とともに、突然の突風にボクはすっ転んでしまった。
なんだよ、アイツ低空飛行しやがって!
バカにしてんの・・・か・・・?!
上空を見ると、まさしく飛竜を絵に描いたようなフォルムの赤茶色の竜が空を飛んでいる。
まっ、まさかアイツが空の王なのか?!
糞鳥どころか、まんま飛竜じゃないかっ!
王にとって、このボクは捕食の対象だという事をすぐに認識した。
マ、マズいな、この辺りは見晴しがいいからすぐに狙われてしまう。
どこか、隠れる所を探して逃げないと・・・。
空から執拗にボクを狙う王から、なんとかうまいこと逃げ切った。
ふーっ、危ない危ない。
ん?ちょっと待てよ。
アイツが王という事は、女王は・・・。
夫婦揃ってガクブルもんじゃないかっ!!
ボクは、王と女王に見付からずにこの森丘を越えなければならなかった。
これはキツい森丘越えになるぞ。
慎重に歩みを進めるボクの目の前に、緑色の女王らしき飛竜が現れた。
ところが、その女王はボクに気付くと、陸を走ってボクに狙いを定めてきた。
トップスピードならボクは負けないぞ!
いくら追い掛けっこしても、ボクを捕えることができない女王は、空へと羽ばたき、上空からボクを狙う算段についた。
ひ、卑怯だぞっ!
おまえ、陸の女王なんだろっ?!
空から狙われたボクは、あっという間に女王の爪で捕えられ、そのまま上空へと連れて行かれた。
うそーんっ!
がっちりと爪で捕えられたボクは、逃れることができない。
あ、あの・・・爪が食い込んで・・・ものすごく・・・痛い・・・です。
下を見ると、かなり上空を飛んでいるようで、高所恐怖症なボクは地に付かない足をバタバタとさせながら目をつぶった。
あぁ、とうとうこのボクも年貢の納め時なのか・・・。
王と女王に食べられてしまったボクの骨は、一体誰が拾ってくれるのだろうか・・・。
せめて、樹海であの糞鳥に一発お見舞いしたかったなぁ・・・。
あーちゃん、ばーちゃんと元気で暮らしてるかなぁ・・・。
ボクはネガティブ思考におちいっていた。
女王は、洞窟の上空で飛行スピードを緩め、ポッカリと空いた穴から洞窟へと静かに降り立ち、ポイっとボクをその強固な爪から解き放った。
ママ・・・、先立つ不孝をお許し下さい・・・。
兄弟達よ、逞しく育つんだぞ・・・。
ボクは目をつぶりながら、ナムナムナムと拝んでいた。
が、一向に食べられる気配は無い。
ピャっ、ピキュっ、ピキィっ
可愛らしい鳴き声が聞こえてきた。
え?
恐る恐る薄目を開けて見ると、そこには女王の雛達がいた。
雛達の後ろから女王が雛達を鼻で突き、まるでボクと格闘してこいと言わんばかりだった。
女王はまさかの教育ママだった。
いや、これぞ正真正銘モンスターペアレンツじゃないか?!
この雛達の狩りの練習相手に連れて来たらしいが、このボクもバカにされたものだな。
こんなピヨっこ相手にw
ボクはこの状況を冷静に考えた。
ボクを見てすぐに飛び掛かってこない雛達は、狩りが初見だということだ。
コイツらをどうにかできても、傍には女王がいる。
何か、突破口はないものか・・・。
ボクは辺りを見渡した。
向こう側と反対側に、2箇所の出口がある。
あの出口なら女王もくぐってはこられまい。
問題はどちらの出口が最適解かということだ。
ここは、雛達と戯れるフリをして、出口へ特攻だ!
ピッキーーンっ。
あっ、そうだ、いいことを思い付いたぞ。
どうせなら、この雛の内にボクのファンゴ力を見せ付け、もう二度と関わってはいけないというトラウマを植え付ければ、コイツらが王か女王に成長しても、ボクを襲ってこなくなるんじゃないかな?
しぶしぶ狩りの真似事をさせられる雛達が、ボクへと向かってきた。
ふふんっ、そんなヨチヨチ歩きでこのボクに勝とうなんて、1億年早いんだよっww
ボクは、雛達が追い付けないスピードの猪突タッコゥで一匹をノックダウンした。
衝撃でひっくり返ってもがもがしている雛と、その衝撃に驚いてガクブルしている他の雛達。
ふふんっ、思い知ったかw
あまりボクを舐めない方がいい。
突き伏せるっ!!
ボクは残りの雛達にも、猪突猛烈タッコゥを連続でお見舞いした。
今の雛達には勝ち目が無いと悟った女王は、その重い腰を上げようとした。
逃げるなら今だっ!!
ボクは、直感で選んだ方の出口へと向かって思い切りダッシュをした。
予想通り、さすがの女王もこの出口からは出てこられない。
すっかり安堵の気持ちになったボクは、自分が今立っているこの場所に驚愕した。
そこは、目も眩むような高さの崖だったからだ。
だ・・・だから、ボクは高所恐怖症だと言ったのに!!
ボクの飽くなき道の冒険譚はまだまだ続く。