それいけ!ファンゴ君(7)

ボクは、偉大なるドスファンゴになる事を夢見て、一人旅をしている。
ボクは雪山へと辿り着いた。
ポッカリと口をあけた洞窟へ入ってみると、ヒンヤリとした空気が漂っている。
うん、寒いな。
さすがに厚い脂肪があるとはいえ、寒いものは寒い。
早くこの山を越えないと。
ボクは先を急いだ。
洞窟を抜けるとひらけた場所に出た。
日の当たらない洞窟に長いこといたボクには、キラキラと輝く太陽の日差しが少し眩しすぎた。
眩しさに目が慣れてくると、そこにはキャッキャとバカっぽく飛び跳ねてる三匹のブランゴがいた。
ちっ、バカ猿か。
ボクはバカ猿に絡まれないように、端の方を歩いて行った。
「おっ、猪ちゃん見ぃーけっ」
「おい、ここいらで見ない顔だな」
「あらあら、どこにいくのかなぁ?ボクちん♪」
ちっ、バカ猿ごときがボクに話掛けんな。
ボクはそいつらを無視して通り過ぎようとした。
「おやおや、そっけないのねん」
「首に青いマフラーなんか巻きやがって、ヒーロー気取りか?」
「え?えっ?首?どこ?どこ?すいません、どの部位が首か教えて下しゃーいっ♪」
むぅーーーーっ。
・・・いかん、いかん、ここはじっと堪えるんだ。
こんなところでバカ猿相手に喧嘩しただなんて、ボクの華麗な経歴に傷が付いてしまう。
ボクは更なる無視を決め込んだ。
すると、一匹のバカ猿がボクの青いマフラーをスルっと首からはずして取り上げてしまった。
「か、返せよ!!」
ボクはつい声を荒げてしまった。
「か、か、か、返せよ~~っ、だってぇ~」
「俺の方がこのマフラー似合うんじゃねぇか?」
「キャー素敵♪ブランゴライダー参上っ!!」
バカ猿達は、ボクの大事なマフラーを弄んでいる。
「返せっ!それは・・・」
バカ猿達からマフラーを取り返そうとしたその瞬間、
「猿共、何してる!!」
突然、ドスの効いた声が響き渡った。
声のする方を見ると、なんと!そこには憧れのドスファンゴがいた。
「逃げろーーーーっ!」
「逃げろーーーーっ!」
「逃げろーーーーっ!」
バカ猿達は、ボクの青いマフラーをポイっと捨てると一目散に逃げて行った。
あっ、あわわっ、
こ、こんにちわっ、
いや、違うな・・・
ボクは、憧れのドスファンゴを目の前にして言葉が出なかった。
「怪我は無いか坊主?」
「ふぁっ、ふぁいっ!あざーっす!!」
何か言わなければ、何か言わなければ、そう思えば思うほど何も浮かんではこなかった。
「アイツらは悪戯好きで有名なブランゴ達だ、あまり近付かない方がいい」
ドスファンゴはそう言うと、ドシドシと重そうな巨体も身軽に歩いて行った。
ふぅーーっ
やべぇー
マジやべぇー
超やべぇー
激やべぇー
テラやべぇー
ボクは超絶高揚した。
あっ、サイン(足型)もらうの忘れた。
あっ、マフラー、マフラー・・・。
ボクは、そよ風で宙に舞うマフラーを追い掛けた。
ボクの飽くなき道の冒険譚はまだまだ続く。