序章 ④

ドサっ ドサっ
目の前から音がする。
タルタロスは目を背けた。
とてもではないが、見ていられなかった。
自分は目の前の妻と娘を見殺しにした。
自分に力が無いばかりに、二人を救えなかった。
目を開ければ、地面に叩き付けられた無残な二人を
見なければいけなくなる。そう思った。
「おっさん、いつまで固まってんだ」
「手貸せ、こいつも狩るぞ」
前の方から少年の声が聞こえる。
おかしい、少年は後ろにいるはずだ。
目を開ける。
少年がダイミョウザザミと戦っている。
どうしたことだ。
もうひとりの青年の横で妻と娘が座っている
いつのまにか、自分の後方にいるはずの少年と青年が目の前にいる
「お二人とも大丈夫ですか?」
どうやら、青年が二人に話しかけているようだ。
「では、もう少し離れていてください。」
「さて、○△○×!! 私も手伝いますよ」
というと、少年と同じ形状の大剣を構え、既に交戦中の少年の元に走っていく。
武器の形状こそまったく同じだが、全体的に青年の方は紫おびているようだった。
さきほど、少年の名を呼んだようだが、タルタロスは、よく聞き取れなかった。
「ザザミさんよぉ 今までは数々のハンターたちを葬ってきたかもしれねぇが
 それも今日で最後だなっ
 俺たちのエピタフとモノリスをなめるんじゃねぇぞ!!!」
少年はそう言うと、ザザミの足を切り払い、ひるんだところに
横から大剣を突き刺している。
青年も同じ動きを行い、両サイドから全く同じ攻撃を加えている。
二人は、少しななめ前に出ると、
ふたつの大剣が盾蟹の両爪を捉え、同時に破壊。
そのまま、剣をなぎはらい、蟹のダウンを誘う。
「おっさん!!!!!!!!」
タルタロスは我に返った。
目の前に起きている状況は全て理解できている訳ではないが
今、自分がしなければいけない事はわかっていた。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおお!!!!!!」
タルタロスは叫んだ。
タルタロスは走った。
目の前のダイミョウザザミはダウンしている。
少年と青年はタルタロスを見つめている。
渾身の力を込め、いや、彼の全てを込め、ダイミョウザザミの頭に大剣を叩き込む。
序章 完