それいけ!ファンゴ君 シーズン4 (7)

ボクは、究極のドスファンゴになる事を夢見て、二匹旅をしている。
チュー助をオトモに従え、ボクらは地底洞窟を進むことにした。
エリア中央にぶっとい柱がある狭い通路を進んでいると、ワラワラとチュー助の仲間達が近寄ってきた。
「おい、コイツ、なんか変なモンスターと一緒にいるぞ」
「また傭兵ごっことかしてるんでチュか?ワラw」
「さぞかし儲かって儲かってウハウハなんでチュね?ブヒw」
なんだ?このスイーツ共はっ?
同じ種族の悪口を言うのは、よくないと思いまつ。
仲間達が言いたい放題言っているのに、当のチュー助は表情一つ変えずにスイーツ共を無視して歩き続けた。
「おいっ!なんか言ってやらないのかいっ?」
「・・・別に構うことないでチュウよ。ツルんでないとデカい態度取れない糞虫共は、下っ端傭兵としても使いもんにならないでチュウ」
糞虫って・・・残念ながら君もその糞虫と同じ種族なんだがなw
でも、敵対種族ならまだしも、同じ仲間にあそこまでバカにされてくやしくないのかな?
ボクらがそのエリアを抜けると、高低差が激しく、やけにだだっ広いエリアに出た。
しかし、そこには巨大な下顎からとてつもなく大きな牙を生やし、赤いカエルのようなモンスターがいた。
そして、それは見るからに不機嫌そうな鬼の形相をしていた。
「な、なんか知らないけど・・・怒ってる?」
「あれは、テツカブラというモンスターでチュウ、いつもあんな顔でチュウよ」
テツオさんか。
テツオさんは、アゴで地面を掘り返すと、巨大な岩をそのキバで持ち上げた。
マジかっ?!
重量挙げチャンピオン、金メダル獲得かっ?!
すると、テツオさんは、持ち上げたその岩を噛み砕き、その破片を周囲へまき散らした。
力自慢アッピルかよっ。
そんな事では、ボクは怯まないぞっ!
モンスターに威嚇されるのは、これまでの旅では日常茶飯事だったからな。
「オイラが盾になってる間に、テツカブラを撃退するでチュウ!」
そう言うと、チュー助は果敢にも、テツオさんとボクとの間に立ちはだかった。
よしっ!
初見だけど、ヤツの弱点は・・・見当たらないっ?!
蛙の割には堅そうな体に、強靭な顎、ぶっとい四肢。
コイツはどこを狙ったらいいんだっ?
そうこう考えてる内に、テツオさんはこちらへと向かってきた。
えーいっ、ままよっ・・・ファイっ!
ボクは、テツオさんの前脚目掛けて突撃タッコゥーをかました。
カッキーンっ!!
え?
ボクの盾となるハズだったチュー助が、なぜかテツオさんの前脚に張り付いて、ヤツの盾となってボクの初撃を弾いた。
「なっ、何やってんだよっ、チュー助っ?!」
「あっ、ゴメンでチュウ・・・つい・・・本能的に勝利が見込める相手の方に張り付いてしまったでチュウ・・・」
「こんな状況でよくも・・・ガチキチ過ぎんだろっ!」
ヤツからスゴスゴと降りてきたチュー助に、ボクはマシンガンの如く説教をかました。
「誠に申し訳ないでチュウ・・・」
「ってか、契約違反だぞっ!ジャンピング土下座だけじゃ、ボクの気は済まないぞっ!!商売舐めてんのかっ?信頼関係があってこそ、商売って成り立つんじゃないのかっ?!」
「・・・お詫びにあと半日分、出血大サービスするでチュウ・・・」
そのやり取りの一部始終を見ていたテツオさんは「ふっ」とその顔に似合わない笑みを浮かべた。
「おまえ達、何か契約事でもしているのか?」
「えっ?まぁ・・・コイツと傭兵契約を・・・(もにょもにょ」
「ほぉ・・・面白い事を考えるものだ、虫っ子」
あ・・・れ?
戦闘意欲は消えてますか?
「今はちょうど腹がいっぱいでな。今度会った時は、我が腹へ入る覚悟をしておくがよい」
テツオさんはそう言い残すと、どこかへと姿を消した。
テツオさんが満腹だったからよかったものの、あのままではボクはぼっち状態で盾を持ったテツオさんと戦うハメになっていた。
「ったく、君ってやつは・・・」
「本当に申し訳ないでチュウ・・・なるべく本能を抑えるよう努力するでチュウ」
なるべくじゃ困るんだよ、なるべくじゃっ!
チュー助の本能とやらは、全くもって信用ならんな。
ボクはブツブツとお小言を言いながら、次のエリアへと進んだ。
ボクらの飽くなき道の冒険譚はまだまだ続く。