破天同轟

ティガレックスは皆、幼少の頃に教養やフィールド情勢等を学ぶ場所として「ティガっ子倶楽部」に入部するのが常識とされていた。
今日は「ティガっ子倶楽部」第2期卒業生達の同窓会の日である。
卒業してから早5年、そのほとんどが繁殖を経験している立派な大人になったティガレックス達が集まった。
「よう!元気だったか?」
「おぅっ!老けたな、おまえ(笑」
「あら、みんな変わらず元気そうね」
ティガレックスやティガレックス亜種達が自然と集い、談笑している傍ら、ポツンと一匹寂しくオードブルの生肉をちびちび食べているティガレックス希少種がいた。
「あれ?アイツ、希少種のティガ・ジミーじゃね?」
「来ないと思ったけど・・・来たんだね」
「昔と変わらず、一匹竜ね」
「だってよ・・・アイツ、爆破の粉塵撒き散らすから迂闊に近寄れねぇよな?」
離れた場所にいても、自分の話題が聞こえていたティガレックス希少種は、聞こえない素振りで生肉を食べ続けた。
昔からティガ仲間には、自分の撒き散らす粉塵が原因で嫌われていたのは慣れていた。
だから大人になったティガレックス希少種は、回りに迷惑をかけないよう、モンスターっ気の無い塔の頂を根城としていた。
最初の内は、誰にも気兼ねせずに暮らしていける場所で伸び伸びと暮らしていたが、その内、誰もいない塔の頂が少し寂しく感じていた頃、同窓会の便りが届いたのだった。
幼少時代は感情の起伏が激しく、粉塵をコントロールできずに辺りへ粉塵を撒き散らしていた自分だが、大人になった今では感情と共に粉塵もコントロールできるようになっていた。
昔は皆から嫌われていたけれど、大人になった皆はもしかしたら今の自分を受け入れてくれるかもしれない・・・。
そんな淡い期待を胸に、出席に○を付けて返信したのであった。
しかし、現実はそんなに甘くはなかった。
大人になった今でも、皆の態度は昔とちっとも変わっていなかった。
とその時、
「遅れちゃったーっ!もう始まってる?」
と、一匹のティガレックス希少種(雌)が会場へと入って来た。
「あっ?もしかしてティガ・ジミー君?」
慌ただしく入ってきたそのティガレックス希少種は、あろうことか自分へと話掛けてきた。
「あぁ・・・もしかして・・・ティガ・マリー・・・か?」
「そうよ!覚えててくれたんだぁ!」
「おっ、おいっ!粉塵漏れてるぞ?!」
「あぁ、ごめんごめん」
幼少の頃、粉塵を撒き散らしていた自分と違って、ティガ・マリーは粉塵を出せないモン畜無害な希少種として、ティガ仲間と楽しく遊んでいた。
他モンとの久々の会話とあってか、ティガ・ジミーはティガ・マリーと積もる話に花を咲かせた。
それを遠くから見ていたティガレックスやティガレックス亜種達。
「やっべー、ティガ・マリーってあんなに美モンだったっけ?」
「俺、希少種でもアイツならイケるわ」
「爆破されてもイイッ!アイツとだったら本望だぜっ!」
おっちょこちょいだった幼少のティガ・マリー、今では美しくも立派なティガレックス希少種へと成長を遂げていた。
「俺らも話・・・混ぜてもらってもいいかな?」
「おいっ、ズリーぞっ?!俺もっ!」
「私もいい?」
気が付くと、ティガ・ジミーとティガ・マリーの回りには、ティガレックスやティガレックス亜種のモンだかりができていた。
話題の中心となっていたのはティガ・マリーだったが、その内、ティガ・ジミーにも回りから声が掛けられるようになった。
「ティガ・ジミー・・・昔は・・・ごめんな」
「いや、こっちこそすまなかった。いくら感情のコントロールが出来ないからっておまえ達に迷惑をかけたな」
「さぁ、昔は昔っ、今は今っ!楽しくやりましょう」
同窓会の宴は夜遅くまで続いた。
楽しい一夜を過ごしたティガ・ジミー。
塔の頂へと帰ってきたティガ・ジミーは、同窓会へ出席してよかったと心から思いながら眠りへ落ちた。
そして翌朝、この何も無い、誰もいない殺風景な塔の頂から引っ越しを決意したのであった。