儚き想いを纏う竜

ここは、モンスター学園。
若きモンスター達は勉学に励み、青春もまた謳歌していた。
このクラスで随一の人気を誇るのは、シャガルマガラだった。
その容姿もさることながら、勉強も学年トップで運動神経も抜群。
クラス中、いや、学園中の女子達は、そんなシャガルマガラに熱い視線を送るのだった。
そのシャガルマガラに恋する一匹の女子、テツカブラは勉強は全くダメで運動音痴だったが、菓子作りが趣味の乙女らしい特技も持っていた。
「あ~も~ダメっ!全っ然分かんないっ!」
「ん?どうしたカブラ?」
「あっ、ゴア君!ここのね、遺跡平原に生息する虫を全て書き出せってところが分かんなくて・・・」
「なんだ、そこか。そこは・・・」
幼少の頃からテツカブラと同じクラスだったゴア・マガラは、何かとテツカブラを気に掛けるのであった。
「ゴア君・・・ちょっと相談があるんだけど・・・いいかな?」
「なんだ?」
「あのね・・・シャガルマガラ君なんだけど、その・・・好きな子とか・・・いるのかな?」
「・・・さあな、直接聞いてみたらいいんじゃねぇか?」
「えっ?えっ?そんな・・・」
「アイツの事・・・好き・・・なのか?」
「えっ、えっ、好きとかそんなんじゃ・・・好き・・・だけど・・・」
「・・・じゃ、告ればいいじゃん」
「えーっ?!だって・・・その・・・私なんか・・・」
「ウジウジしてっと、他の女子に取られるぞ?」
「・・・うん、わかった!勇気だして言ってみるね、ありがとうゴア君!」
その日の放課後、テツカブラはモンスターっ気の無い体育館裏へとシャガルマガラを呼び出した。
「用事ってなんだい?テツカブラ」
「シャガルマガラ君・・・あのね・・・好きですっ!私とお付き合いして下さいっ!!」
突然の告白に驚いたシャガルマガラであったが、告白されるのは慣れっこなのか、すぐにいつものシャガルマガラの表情になった。
「ありがとう、僕に好意を持ってくれて。・・・でも、僕は君と付き合うことはできないんだ、ごめんよ」
「・・・ほ、他に好きな子とか・・・いるの?」
「・・・うん、全然片思い中だけどね」
「えっ?シャガルマガラ君なら相手の子もウンって言うよ、きっと!勇気を出して告白した方がいいよ、絶対っ!!」
「そ、そうかな?じゃ、考えてみるよ。なんか、逆に勇気をもらってありがとう」
「ううん、私・・・シャガルマガラ君の事・・・応援するからっ!」
テツカブラは振られた事を悲しむよりも、シャガルマガラの幸せを願ってその恋を応援する事にした。
翌日、園舎の大きな木の下で昼寝をしていたゴア・マガラの元へシャガルマガラがやってきた。
「よっ!賭けは僕の勝ちだったな、約束通り、ポポノタントリプルバーガー奢ってもらうよ?」
「ちっ、テツカブラのやつ・・・本当にオマエに告ったんだな」
ゴア・マガラとシャガルマガラは、テツカブラがシャガルマガラに告白するかどうかを陰で賭けていたのだった。
「しかし、君も罪な男だな。昔からテツカブラと仲良かったのに。・・・って、あれ?まさか、君・・・テツカブラの事・・・」
「は?あんなズングリムックリの女なんて興味ねーよ、俺と釣り合うわけないだろ?」
「・・・(僕となら・・・釣り合う・・・かな?)」
「俺はもっとこう、スレンダーな女子がいいんだよっ!」
「・・・(スレンダーな・・・”女子”か・・・)」
シャガルマガラの想いは永遠に届きそうにはなかった。