抗いがたき苦悩との戦い

この世には、2種類のモンスターがいる。
狩る側と狩られる側。
ツイている奴とツイてない奴。
残念ながら、僕は後者の方だ。
アプトノスは、遠い目をした。
好きな子に求愛しても、ことごとくフラれてばかり・・・。
草を食べていると、気が付かない内にマヒダケを一緒に食べてマヒしてしまったり・・・。
散歩しようと少し遠出したら、リオレイアに追い掛けられたり・・・。
何も無い所でコケたり・・・。
僕の不注意もさることながら、例えば何故に僕はモテないのか?
辺りの雄のアプトノスと見比べても、外見上はほとんど差が無い。
尻尾のスパイクに、ちょっとした傷があるぐらいか。
いや、それでも、言われないと気付かないレベルだ。
となると、外見上の問題は無い・・・と。
中身・・・性格の問題・・・か?
いや、僕が自分で言うのもなんだが、いたって普通の性格だと言える。
変な趣味がある訳でもなく、暴力を振りかざしたりなんてしない、どちらかというと優しい部類に入るのではないかと思う。
相性の問題だと言われたら、それはそれで諦めるしかなさそうだ。
男らしさの問題なのだろうか?
アプトノスとして生きてきて、何をもって男らしい行動と言うのか?
あえて、肉食系に挑むこと?
いや、それは違う気がする・・・。
危険な事から女子を守る事?
残念ながらこの僕には・・・実に守るべき対象となる女子が・・・いない。
では、どうやって「男らしさ」を証明できるか?
・・・。
・・・・・・。
残念ながら、今のこの僕にはその答えは見付からない。
いったい、いつになったらその答えが見付かるのだろうか?
そして、いつまで僕は毎日毎日同じことを考えるのだろうか?
何か月、何年・・・もしかしたら寿命が尽きて死ぬその瞬間まで、その答えは見付からないかもしれない。
・・・いや、ちょっと待て。
もしかしたら・・・今、僕がこうして生きていられのは、もしかしたらもしかしたらだけど、ツイている方なのではないだろうか?
モテはしないけど、大きな病気もせず、いまだに捕食されずに生きている!
僕は・・・生きているこの事自体に感謝すべきなのではないだろうか?
うん、きっとそうだ!
僕は・・・ツイている!
今日初めて、僕は前者となった!!
アプトノスは、目を閉じてこの「生」に感謝した。
「ねぇねぇ、あそこのアプトノスってさー、たまに難しい顔をして何考えてるか分かんないよねー」
「そーそー、変だよねー」
「でも、話してみるといたって普通なんだよねー」
「そーそー、普通、普通!普通過ぎて普通」
「悪いアプトノスじゃないんだけどねー」
「うん、どちらかというと良いアプトノスなんだけどねー」
「でも、たまに何にも無いとこでコケたりしてるよねー」
「そーそー、見た事あるー、ドジッコさんなのかなー」
「ドジトノス!」
「ナニソレ?キャハハっ」
アプトノスは、少し離れた場所でこちらを見ながら何やら話をしている女子達に気が付いた。
彼女達・・・僕の方を見ている・・・。
もしかして・・・僕とお知り合いになりたいのだろうか?
僕は、思い切って彼女達に声を掛けることにした。
「こっ、こんにちわ!」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
あ・・・れ?
何か様子がおかしい。
「きっ、今日も良い天気だね!」
「・・・あっ、あたし、用事を思い出した」
「あっ、私も・・・」
「・・・待ってー、私もー」
女子達は一斉にアプトノスから離れていった。
・・・何か気に障る事でもしたかな?
天気の話がまずかったのか?
ここは素直にお友達になって下さい!と言うところだったのか?
うーん、うーん・・・。
どうして僕はこうまでして女子達に嫌われるのだろうか?
うーん、うーん・・・。
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