スピンオファンゴ君

[妹編]
今日も平和な密林で、妹ファンゴは、友達のコンガと待ち合わせをしていた。
しかし、いつまで経ってもコンガは現れない。
日が暮れ始めた頃、そろそろ帰ろうかと思った矢先にようやくコンガが現れた。
「コンガ君、おっそーーーいっ!!」
「ちょり~っス!メンゴ、メンゴ、来る時に父ちゃんに捕まっちゃってさ~」
コンガは、父からババコンガの後継者としてそのチャラい言動をどうにかしろと説教されていた。
「どーにかしろって言われてもさ~、これってある意味父ちゃんからのDHAだからさ~、ど~にもなんないって言うかさ~」
「コンガ君、それ言うならDNAでしょ?DHAってお魚でしょ?」
「あっそ~なの~?どっちでもいいやぁ~(ホジホジ」
妹ファンゴは、ため息を付いた。
コンガ君が友達だという事をお兄ちゃんに反対されたけど、最近やっとその意味が分かってきたかも・・・。
「コンガ君、私ね・・・」
「今日は何して遊ぼっかな~」
「もうっ!コンガ君、聞いてっ!!」
初めて妹ファンゴの怒鳴り声を聞いたコンガは驚いた。
「私ね、そろそろ自立しようかと思ってるの」
「じ、じっ、痔っ・・・え~っ?ファンゴちゃん、痔だったの~?」
「ジ・リ・ツ、自立よっ!!」
妹ファンゴは、真剣な目でコンガを見つめながら言った。
「お兄ちゃんなんてとっくに自立してるし、私もそろそろかな・・・って。私、堕落した女にはなりたくないのっ!」
「ダラダラしててもい~じゃんっ、父ちゃんだってあんな説教たれるワリにはいつもダラダラしてるし、ダラダラしたファンゴちゃんも好きだったりして~っ♪(ホジホジ」
鼻をほじりながら言うコンガに、妹ファンゴはもうコイツには何を言っても無駄だと観念した。
「私ね、まだ自信無いからそんなに遠くには行けないけど、少し旅に出ようと思うの。だからコンガ君とはもうお別れだからっ!」
「・・・・・・ちょっとの間ならい~けどさ~、あっ、お土産ヨ・ロ・シ・クぅっ♪」
コンガ君、絶対意味分かってないよね。
でも、このままコンガ君と一緒にいたら、私はファンゴとしても女としても成長できない気がするから・・・。
お母さん、まだ早いって反対するかな?
その晩、妹ファンゴは母へ旅に出る決意を話した。
意外にも母は快く承諾してくれた。
そうと決まれば、出発は早い方が良い。
翌朝、妹ファンゴは母と兄弟達に別れを告げ、巣穴を旅立った。
この密林ともしばらくお別れね。
辺りの景色を目に焼き付けながら歩いていると、時折、後ろの方でカサっ・・・カササっ・・・という微かな物音がする。
妹ファンゴは立ち止まった。
すると、その物音も止まった。
妹ファンゴがまた歩き出した。
カサっ・・・カササっと、こちらの歩くリズムに合わせて音がする。
妹ファンゴは、思い切って振り返った。
本人は隠れているつもりだろうが、木陰から桃色の毛がはみ出ている。
・・・コンガ君だ。
妹ファンゴはため息を付いて、大声で言った。
「コンガ君、来ないでよ!絶対に来ないでよっ!!」
妹ファンゴは勢いよく駆け出した。
すると、後ろの物音も勢いよく付いてくる。
「イーヤーっ!来ないでーーーっ!!」
妹ファンゴは兄にも負けない位のトップスピードで、その物音を突き放すが、それでも遥か遠くの物音に怯えながら更に走り続けた。
こんな旅の始まりなんてイヤっ!
折角の一人旅でワクワクドキドキしたかったのに、最悪ぅ!!
あの時、お兄ちゃんの言う事を聞いておけば良かった!!!
妹ファンゴの旅は、最悪のスタートで始まった。