それいけ!ファンゴ君(37)

ボクは、偉大なるドスファンゴになる事を夢見て、一人旅をしていた。
壇蟹の洗礼を受けたボクは、チャラコンガと一緒にHCドスファンゴの探索を続けた。
全然見つからないな。
「あ~、そ~いえばぁ、父ちゃんが言ってたんだけどぉ、HCのドスファンゴは地面に潜ることもできるらしいっスよぉ~」
な に っ ?!
どこまで偉大なんだよっ?!
これは絶対に会いに行かねばなるまいっ!
とその時、横から地面の塊のようなものがゴロゴロと転がってきた。
なんだ?
と転がってきた方向を見ると・・・、いたっ!!
ドスファンゴだっ!!
モヒカンのように長く白い鬣。
天をもつらぬくような長い牙。
Ohhhhhhっ!
念願のHCドスファンゴ様だっ!
なんて猛々しい風貌だっ!!
ボクは嬉しさと驚きとでガクブルする足取りで、HCドスファンゴの元へと歩み寄った。
「こ、こ、こんにちわっ・・・」
頭上からボクを見下ろすHCドスファンゴ。
「あっ、あのぅ・・・」
そうボクが言いかけた時、
ベチャーっ!!
なんと!
茶褐色の汚物らしきものが、HCドスファンゴの顔に、それもど真ん中に命中している!
あ・・・あ・・・、言葉を失ったボクは、すぐさま振り返った。
すると、後ろの茂みからひょこっと顔を出しているチャラコンガが、「やったっス!」と親指を高らかに上げている。
あんのぉバカgっ!!!
YOU BAN.
ボクは恐る恐るHCドスファンゴの顔をチラっと見上げた。
あの表情は、今でも悪夢にうなされる程の激昂っぷりだった。
HCドスファンゴは、チャラコンガとボクとを交互に、重力で押しつぶされそうになる程に重たく、ドス黒い混沌とした眼差しを向けた。
「あっ、あのっ、ごっ、誤解でつっ!!」
ボクの言い訳などに耳を貸す訳もなく、HCドスファンゴは突然、ドッドッと穴を掘ると、地面へと潜ってしまった。
あっ、あれっ?あれっ?
すると、オロオロするボクの後ろから突然現れたかと思うと、ボク目掛けて一直線に突進してきた。
メーデー!メーデー!
咄嗟にボクは横軸へと駆け抜け、間一髪、HCドスファンゴの一撃を受けずに済んだ。
あぁ、もうダメだっ。
こんな状態じゃ、話をするどころの雰囲気じゃないぞっ!
「おいっ!逃げるぞ!」とボクはチャラコンガへ怒鳴った。
「いえっさーっス!」
ったく、こいつは・・・。
ボクらは命からがら、HCドスファンゴの元から無事に離れることができた。
安全な場所で一息ついた時、ボクはあのチャラコンガがしゅんっとなる程に小一時間。
日が暮れてきたので、ボクらは散会した。
巣穴で眠りにつきながらも、ボクは色々と考えた。
ボクが今まで目指していたのは、単なる偉大なドスファンゴだった。
しかしながら、今日、目の当たりにしたのはHCドスファンゴ。
もしかしたらこの世界には、HC以上に最強なドスファンゴが存在するのかもしれない。
ボクはこのまま、こうしていてもきっと、それ以上のドスファンゴになる事はできないだろう。
よしっ!
ボクは、この地よりも更に遠い異国を目指して旅に出ることにした。
今以上の経験値を稼がなくては、更なる高見を目指せないからだ。
ボクは内に秘める野望をメラメラと燃え上がらせると、深い眠りについた。
ボクの飽くなき道の冒険譚はまだまだ続く。