それいけ!ファンゴ君(34)

ボクは、偉大なるドスファンゴになる事を夢見て、一人旅をしていた。
どこで道を間違ったのか、ボクは故郷であるこの密林へと戻ってきてしまった。
久々の故郷ということもあってか、ボクは巣穴でゴロゴロと自堕落な生活を送っていた。
そんなある日の昼下がり、ママが備蓄していたキノコをモグモグと頬張りながらゴロゴロしていると、ママのカミナリがピンポイントで落ちてきやがった。
「コラーーっ!いつまでもゴロゴロしてっ!そんなに暇ならキノコでも採っておいでっ!!」
「(もぐもぐ)ほわぁ~い」
巣穴を追い出されたボクは、特にあてもなく密林を散歩した。
小高い丘に辿り着いた時、空から大きな鳥がバサバサと舞い降りてきた。
「あらっ?ファンゴちゃん?随分と大きくなっちゃって」
「あっ!クックおばちゃん、お久ぶりですっ」
クックおばちゃんは、近所に住んでいるとっても優しいおばちゃんだ。
ボクらは久々の再会で、世間話に話を咲かせた。
すると、ふとおばちゃんが溜息を付いた。
「どうしたの?クックおばちゃん」
「いやねぇ、親戚のガルルガちゃんがあちこちで悪さをしてるみたいでね、おばさん心配で心配で・・・」
ボクは思った。
ここでおばさんの悩みの種である、ガルルガにガツンと一発かましておばさんに対するボクの株を上げるんだっ!
「おばちゃん、ボクに任せてよっ!」
「あっ・・・ファンゴちゃん・・・」
おばちゃんは何かを言いかけたが、ボクはすぐさまガルルガを探しにその場を駆け出した。
あれっ、親戚って言ってたけど、どんなヤツか聞くの忘れたな。
まぁでも鳥には変わりないんだろ?
ボクはその辺にいたケルビ達からガルルガに関する情報を得た。
ふむふむ、聞いた話をまとめると、黒っぽくて耳が大きくて尻尾が長くてかなりのワンパク坊主らしい。
へー、ワンパクねぇ(棒)。
このボクに比べたら、所詮、三下だろ?ww
ガツンとワンパン・・・否、ワンアタッコを決めてやるかっ!
ボクはガルルガを探してる内に、子供の頃に絶対に入ってはダメとママに言われていた立入禁止区域である洞窟へとやってきた。
すると、そこには黒っぽい、どちらかというと濃い紫色の大きな鳥の後ろ姿が見えた。
大きな耳、長い尻尾、後ろから見るとフォルム的には、クックおばちゃんに似てなくもない鳥だった。
コイツだな?
どれっ、このボクが一発・・・・・・。
ボクが攻撃をしかけようとしたその時、その鳥がゆっくりとこちらに振り向いた。
そして、その顔を見てボクは愕然とした。
・・・ワン・・・パク坊主?
あれのどこがっ?!
ワンパクなんて生易しいもんじゃないぞっ!
あれはどう見ても・・・近寄ってはいけませんレベルじゃまいかっ!!
まるでシャカシャカの鳥版的な凶悪そうな顔立ち。
見る者を凝固させるような冷たい眼光。
骨まで砕きそうな鋼鉄のような嘴。
全てを拒絶しているかのような鋭い棘。
近寄る者は全て薙ぎ払うであろう禍々しい尾。
どこにあの優しいクックおばちゃんの血が入ってるんだよっ?!
闇の炎に抱かれしものの血とか混ざってるだろっ!!
おばちゃん、ボク・・・怖くないって言ったら嘘になりますよっ!
でも、ボク・・・言ってやりますよっ、ガツンって!!
・・・・・・・・・。
イテテテっ・・・急にお腹の調子が・・・。
また後日、体調の良い日にでも出直すとするか。
その日以来、クックおばちゃんとは疎遠になってしまった。
ボクの飽くなき道の冒険譚は・・・続く・・・のか?