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    ハッピーハムスター

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悪達のハーモニー

地底洞窟の奥深い場所で、ゲリョスとネルスキュラが両者睨みあいのさなか、一色触発の状態にあった。

ネルスキュラは大好物のゲリョスから目線を逸らさず、ズズッと滴り落ちそうなヨダレを啜った。
「うわっ、きったねーっ!おまえ、今、ヨダレ啜っただろ?」
「は?啜ってねーし!」

ゲリョスは、ペッと紫色の毒液をネルスキュラの目の前に吐いた。
「おわっと、きったねーなっ!てめーこそクソ痰吐くなやっ!」
「は?痰じゃねーし!」

ネルスキュラは、体を伸びあがらせると腹を前方へ向けて尻から毒液をゲリョスの目の前へと噴射した。
「うわっ、きったねーっ!おまえ、腹壊してんのかっ?」
「は?腹壊してねーし!」

ゲリョスは、尻尾をゴムのように伸ばしながらその場で右回転をした。
「へっ、なんだ?そのクソターンはっ?ここまで届かねーし!」
「は?別におまえに届かせようとは思ってねーし!」

ネルスキュラは、軽快に横へとステップを踏んだ。
「ふっ、なんだ?そのヘッポコステップは?」
「は?てめーには出来ねー芸当だし!」

ゲリョスは、頭を持ち上げるとバチバチと数回トサカを鳴らして閃光を発した。
「へんっ・・・そんなの全然・・・効かねーし!」
ネルスキュラはピヨピヨと小さなイャンクックを頭の回りに羽ばたかせながら、頭がクラクラとしていた。
「ふっ、効いてんじゃねーかっ!」

ネルスキュラは目まいをしながらも、尻から糸を放ち、ゲリョスを見事に拘束させた。
「ふん・・・拘束したつもりだろーが、全然ユルユルだし!」
ゲリョスはその糸を振り解こうともがいたが、その糸はゲリョスの羽へと絡みついて全く解くことができなかった。
「へっ、効いてんじゃねーかっ!」

依然として頭がクラクラしているネルスキュラと、糸で拘束されて身動きが取れないゲリョス。
ネルスキュラの目まいが治ったと同時に、ゲリョスは自力で糸の拘束を解いた。

「ハァハァ・・・」
「ウゥッ・・・」

「・・・明日こそ、てめーを天井から吊るしてやるからなっ!」
「・・・できるものならやってみろっ!今度こそ返り討ちにしてやっからなっ!」
二匹は翌日の決戦を約束すると、それぞれのねぐらへと帰って行った。

— posted by JUBIA at 03:22 pm   pingTrackBack [0]

黒く蝕み墓地を染めん

俺は、戦友とも言えるべき友を亡くした。

回りからは黒蝕竜と呼ばれ、忌み嫌われていた俺達だったが、それでも友と一緒にいる時は、時にふざけ合ったり、時には一緒に狩りに出掛けたりしてそれなりに平穏な日々を過ごしていた・・・。

しばらくの間、この遺跡平原を留守にしていた俺だったが、久々に第二の故郷でもあるこの遺跡平原へと戻ってきたついでに、俺は友の墓参りへ行くことにした。

友が葬られている場所は、この遺跡平原の中でもあまりモンスターっ気の無い、小さな池のほとりだった。
俺は、僅かばかりの花と手土産を持って、墓がある場所までやってきた。
墓といっても、まだ若い1本の樹木が墓標代わりになっているだけだ。
俺は、花と手土産をその樹木の根本へそっと静かに置いた。

「これ、見たこと無いだろ?竜仙花って言って、この辺には咲いてない花だ。おまえの為に、摘み取ってきたよ。・・・あと、肉も少しだけど置いておくから、これで腹でも満たしてくれよ」
俺はしばし、追悼の意を込め手を合わせた。

「また来年・・・来れたら来るよ。次もまた珍しい物を持ってくるから、楽しみにしてろよ」
俺は、久々の墓参りを済ませてその場を立ち去ろうとした。
が、そのエリアを出ようとした時、ふと俺に声を掛けてきたやつがいた。

「ちょっと待ちなっ!」
細い枯れ枝を集めて作ったのだろうか?少し不格好なホウキを片手にした年老いたケチャワチャがそこに立っていた。

「困るんだよねぇ、供え物をするのはいいんだけどさ、供物は持ち帰ってもらわなきゃぁ」
は?
何言ってるんだ?コイツ・・・。

「ワシはここらへんの墓守をしてるんだけどさぁ、皆、供物を置いて帰るから大変な事になってんだよぉ。ほら、見てみなっ!」
俺は、さっきまでいた友の墓の方へと振り返った。

そこには、いつのまにかクンチュウの群れが、俺が置いておいた肉にわんさかと群がっていた。
あいつら・・・いつの間にっ?!

「分かったかい?あいつらが食い散らかすから、掃除も大変になるのさ。だから、供物は持ち帰ってもらう決まりなんだよ」
「す、すまなかった・・・そうとは知らなかったんだ・・・」
「知らなかったと言えば、それで済ませると思われても困るんだがねぇ」
「あ、いや、本当にすまなかった・・・すぐに片付けるよ」

「ほら、こういう事が積み重なっていくと、やれ注意書きの看板を立てなきゃならねぇ、やれ規則がどうたらこうたらって、面倒な事が増えるばかりだろ?」
「・・・はぁ」
「みんな、ちゃんとモラルを持った行動をすれば、規則なんてものは本来必要無いのさ」
「・・・はぁ」
何とも面倒な話になってきた・・・。

「今・・・片付けるよ」
俺は、肉に群がっていたクンチュウ達をシッシッと追い払ったが、それでも肉に食い付いて離さないクンチュウがいた。
「早くどかないと踏んづけるぞっ?!」
俺は、しぶといクンチュウを踏み付けようとした。

「そのクンチュウ達も、本当は何も悪くないのさぁ。ただ、食い物がそこにあるからやってきただけで、クンチュウ達だって皆、生きるのに必死なのさぁ」
「・・・・・・」
俺は踏んづけようとしていたその足を下ろし、肉に食い付いているクンチュウを、そっと静かに肉から離してやった。

「世の中、害虫やら害獣やらで騒いでいる所もあるが、決してあいつらだけが悪いとは思わないねぇ。きっと、なるべくしてそうなってるんだよぉ。何事も、結果には必ずその原因となるモノがあるのさぁ」
「・・・はぁ」
俺は、食い散らかっている肉片を片付けながら、墓守の話に耳を傾けた。

「別におまえさんだけを責めてる訳じゃないんだよぉ。ただ・・・一匹でも多くのモンスター達に、この現状やモラルってもんを教えてやりたくてねぇ。まぁ、塵も積もればなんとやら・・・ってやつさぁ」
「・・・そうっすね」
俺に説教するとは正直ウザかったが、実際、墓守の言う事にも一理ある。
俺は今までそんな事は考えた事が無かったが、こうして考えてみると、確かにそうだな・・・と思えてきた。

「それじゃ、俺がその教えを広めてやるよ。一匹でも多く・・・だろ?」
これから出会うやつらに、片っ端から説教を説いてやればいいんだろ?
ちょっとした宣教師って気分だな。

「おまえさん・・・話が分かるイイ男じゃないか。それじゃぁ、この墓守の跡継ぎはおまえさんに決定だなっ!ワシも歳でなぁ、この仕事も結構キツイんだわぁ」
えっ?
いや・・・そんなつもりはまったくないんだが・・・。
俺が・・・墓守?
まさか、そんな・・・無理だろっ?!

「いや、こんな俺がここにいたら、みんな怖がって墓参りなんてしに来ないだろ?」
「いんやぁ、強面のおまえさんがそこにいるだけで、色んな抑止力になるのさぁ。誰も悪さしたり、マナー悪く墓参りなんて出来ないだろぉ?」
「でも・・・いやぁ・・・やっぱ・・・」
「ほらよっ」
墓守は、手にしていた不格好なホウキを俺に手渡した。

「そんじゃ早速、今日から頼むわぁ。あぁ、腰が痛えぇ」
「ちょ・・・おいっ?!」
元墓守は、腰をトントンと軽く叩きながら、その場からいなくなり、ホウキを手にした俺は、しばらくその場に立ちすくんだ。

— posted by JUBIA at 03:24 pm   pingTrackBack [0]

破天同轟

ティガレックスは皆、幼少の頃に教養やフィールド情勢等を学ぶ場所として「ティガっ子倶楽部」に入部するのが常識とされていた。

今日は「ティガっ子倶楽部」第2期卒業生達の同窓会の日である。
卒業してから早5年、そのほとんどが繁殖を経験している立派な大人になったティガレックス達が集まった。

「よう!元気だったか?」
「おぅっ!老けたな、おまえ(笑」
「あら、みんな変わらず元気そうね」

ティガレックスやティガレックス亜種達が自然と集い、談笑している傍ら、ポツンと一匹寂しくオードブルの生肉をちびちび食べているティガレックス希少種がいた。

「あれ?アイツ、希少種のティガ・ジミーじゃね?」
「来ないと思ったけど・・・来たんだね」
「昔と変わらず、一匹竜ね」
「だってよ・・・アイツ、爆破の粉塵撒き散らすから迂闊に近寄れねぇよな?」

離れた場所にいても、自分の話題が聞こえていたティガレックス希少種は、聞こえない素振りで生肉を食べ続けた。

昔からティガ仲間には、自分の撒き散らす粉塵が原因で嫌われていたのは慣れていた。
だから大人になったティガレックス希少種は、回りに迷惑をかけないよう、モンスターっ気の無い塔の頂を根城としていた。

最初の内は、誰にも気兼ねせずに暮らしていける場所で伸び伸びと暮らしていたが、その内、誰もいない塔の頂が少し寂しく感じていた頃、同窓会の便りが届いたのだった。

幼少時代は感情の起伏が激しく、粉塵をコントロールできずに辺りへ粉塵を撒き散らしていた自分だが、大人になった今では感情と共に粉塵もコントロールできるようになっていた。
昔は皆から嫌われていたけれど、大人になった皆はもしかしたら今の自分を受け入れてくれるかもしれない・・・。
そんな淡い期待を胸に、出席に○を付けて返信したのであった。

しかし、現実はそんなに甘くはなかった。
大人になった今でも、皆の態度は昔とちっとも変わっていなかった。

とその時、
「遅れちゃったーっ!もう始まってる?」
と、一匹のティガレックス希少種(雌)が会場へと入って来た。

「あっ?もしかしてティガ・ジミー君?」
慌ただしく入ってきたそのティガレックス希少種は、あろうことか自分へと話掛けてきた。

「あぁ・・・もしかして・・・ティガ・マリー・・・か?」
「そうよ!覚えててくれたんだぁ!」
「おっ、おいっ!粉塵漏れてるぞ?!」
「あぁ、ごめんごめん」
幼少の頃、粉塵を撒き散らしていた自分と違って、ティガ・マリーは粉塵を出せないモン畜無害な希少種として、ティガ仲間と楽しく遊んでいた。

他モンとの久々の会話とあってか、ティガ・ジミーはティガ・マリーと積もる話に花を咲かせた。

それを遠くから見ていたティガレックスやティガレックス亜種達。
「やっべー、ティガ・マリーってあんなに美モンだったっけ?」
「俺、希少種でもアイツならイケるわ」
「爆破されてもイイッ!アイツとだったら本望だぜっ!」

おっちょこちょいだった幼少のティガ・マリー、今では美しくも立派なティガレックス希少種へと成長を遂げていた。

「俺らも話・・・混ぜてもらってもいいかな?」
「おいっ、ズリーぞっ?!俺もっ!」
「私もいい?」

気が付くと、ティガ・ジミーとティガ・マリーの回りには、ティガレックスやティガレックス亜種のモンだかりができていた。
話題の中心となっていたのはティガ・マリーだったが、その内、ティガ・ジミーにも回りから声が掛けられるようになった。

「ティガ・ジミー・・・昔は・・・ごめんな」
「いや、こっちこそすまなかった。いくら感情のコントロールが出来ないからっておまえ達に迷惑をかけたな」
「さぁ、昔は昔っ、今は今っ!楽しくやりましょう」
同窓会の宴は夜遅くまで続いた。

楽しい一夜を過ごしたティガ・ジミー。
塔の頂へと帰ってきたティガ・ジミーは、同窓会へ出席してよかったと心から思いながら眠りへ落ちた。

そして翌朝、この何も無い、誰もいない殺風景な塔の頂から引っ越しを決意したのであった。

— posted by JUBIA at 03:28 pm   pingTrackBack [0]

ネルスキュラから愛を込めて

俺は無く子も黙るネルスキュラ。

俺が歩けば、皆、一様に道を空けてくれる。
無用な戦いを避けられるのは、いい事だと思う。

しかし、最近、女子モンスター達からの好感度が著しく下がっているのは気のせいだろうか?

俺が女子モンスター達の傍を横切った後にヒソヒソと聞こえてくるのは、あまりよろしくない話ばかりだ。

「なんか、ネルスキュラって気味が悪いわよね」
「そうそう、あの見た目が気持ちが悪いって言うかー、生理的に受け付けないって言うかー」

この見た目にケチを付けられるのは、俺ではなく、俺を産んだ母に言ってほしいものだ。
・・・それだと母が可哀相だな。
こんな風貌に進化させた祖先に言ってもらいたいものだ。

それに「生理的に受け付けない」という言葉は、いくらこの俺でも、心の奥底にズドンと突き刺さるものがあってだ・・・。
もう少し、やんわりと、ソフティーに、遠回しに言って頂きたいものだ。

「知ってる?ネルスキュラってゲリョスを吊り下げるのが好きなんですってぇ」
「えーっ?なにそれっ?!まるでホラーじゃない!!」

あれは、俺が趣味でやっている事だと本気で思っているのか?
ゲリョスは俺にとっての餌だ。
保管方法として、地べたに置いたんじゃ、クソムシが群がるだろう!
衛生的かつ長期保存がきくよう、天日干しにしているのだ!
こちらの事情も何も知らないで、よくもまあ勝手な事を言うものだ。

しかし・・・だ!

俺は・・・何を言われようが、どんな風に思われようが、世の中の女子モンスターが大好きだーーっ!

特にあの子・・・。
今度会った時、俺から世界一の愛を込めて、小粒モンスターの繭包みをプレゼントするんだ!!

— posted by JUBIA at 02:30 pm   pingTrackBack [0]

笑の鳴き勇

「どーもーっ!こんばんわーっ!ガラコンガでーっす!!」

ガララアジャラとババコンガ。
今話題のお笑いコンビである。
モンタの神様への出場を目指して日夜、漫才の練習をしていた。

ガ「・・・・・・」
バ「・・・・・・」
ガ「できてんの最初の挨拶だけかよっ?!」

バ「俺さ、漫才じゃなくてコントやりてぇな」
ガ「はーっ?コントってどんなコントだよっ?」

バ「うーん、ファミレスの店員と客・・・とか?」
ガ「ありがちじゃん」

バ「うーん、じゃぁ、銀行強盗とお巡りさん・・・とか?」
ガ「それもよくあるヤツじゃん」

バ「お前もなんかネタ考えろよっ」
ガ「なんだとっ?締めるぞゴルァ!」
バ「あ゛?屁ぶっかけるぞグルァ!」
ガバ「・・・ハハハハっ」

ガ「じゃぁさ、プロレスは?」
バ「どんな風に?」
ガ「俺がお前を締めて勝負が付くって時に、お前が放屁で逆転するっていうヤツ」
バ「それこそ、まんまやんけっ!」
ガ「なんだとっ?締めるぞゴルァ!」
バ「あ゛?屁ぶっかけるぞグルァ!」
ガバ「・・・ハハハハっ」

バ「うーん、やっぱ漫才か・・・」
ガ「どっちだよっ?!」
バ「いや、やっぱコントだなっ!それも誰もやった事の無い目新しいヤツで」
ガ「例えば?」

バ「うーん、今ゆるキャラ流行ってるよな?」
ガ「流行ってるな」
バ「着ぐるみでやるってのどうよ?」
ガ「俺らそんな着ぐるみ作るゼニーねぇだろ!」

バ「じゃ、頭だけとか」
ガ「は?」
バ「お前がテツカブラのお面付けて、俺がウルクススのお面付けるとか」
ガ「なんで俺がテツカブラだよっ?!やだよっ!」
バ「じゃ・・・ネルスキュラ・・・か?」
ガ「・・・なんか微妙じゃねぇかっ!」
バ「じゃ・・・ケチャがいいのか?」
ガ「なんでそうなるんだよっ?!締めるぞゴルァ!」
バ「あ゛?屁ぶっかけるぞグルァ!」
ガバ「・・・ハハハハっ」

バ「いっやー、ネタ考えてる時が一番楽しいわ」
ガ「完成しねぇけどな」
ガバ「ハハハハっ」

モンタの神様への出場は叶うのか?
頑張れ、ガラコンガっ!!

— posted by JUBIA at 03:20 pm   pingTrackBack [0]

重厚で重甲な間食?

天空山に、仲睦まじいアルセルタスとゲネルセルタスの夫婦がいた。
何をするにも、夫婦一緒に行動し、回りからもおしどり夫婦のお手本とされていた。

そんなある日、ハンターからの襲撃を見事返り討ちにし、巣へと戻った夫婦。
「あんたっ、今日もお疲れ様」
「おまえもよく頑張ったよ」

互いに、労いの言葉を掛け合う夫婦であった。
しかし、この日、夫であるアルセルタスはふと気付いた事を妻であるゲネルセルタスへと問うた。

「おまえ・・・最近、ちょっと・・・太ったか?」
「えっ?」
戦闘中、妻を持ち上げて飛行する際、いつもより若干の重みを感じていた夫であった。

「いやねーっ、体重はここ最近変わってないわよ?」
「そう・・・か?」
夫は、ガッチリとした胴体、脚の妻の身体をジロジロと見た。

「なによっ?疑ってるの?そりゃぁ、50g前後の誤差はあるでしょうけど、太ってなんかいないわよっ!」
「うーん、でも・・・今日、おまえを持ち上げた時、いつもより重たく感じたんだ・・・」
一歩も引き下がらない夫に、妻は業を煮やした。

「はいはい、それじゃ、私が少しだけ太ったって事でこの話は終わりっ。いいわねっ?」
「そ、そーだな」
ぷんぷんご機嫌斜めの妻をこれ以上機嫌悪くさせるのも、夫して失格だ。
夫は、もうそれ以上の事は言うまいと心に決めた。

ゲネルセルタスの事を心から愛していたアルセルタスは、多少太ったからといって、ゲネルセルタスを見限るような上辺だけの愛情ではなく、太ったなら太ったと、ただ正直に認めて欲しかっただけなのだ。
しかし、それが原因で夫婦喧嘩してしまっては元も子もないと思い、それ以上の言葉を飲み込んだのだった。

ある日、ふと妻がいない事に夫が気付いた。
そういえば、ここ最近、妻がいない事が多くなったと感じていた夫。
餌でも探しに出掛けてるのだろう。
と、最初はそう思っていたが、基本、食事も夫婦一緒に済ませていた為、自分の目を盗んでは小腹を満たしていたのだろう。
意外と女性の方が、食に関して貪欲なのは百も承知だった。
それならそれで、夫は妻を咎める気はさらさらなかった。
「俺もたまにはオヤツを一緒に食べてやるとするか」
夫は、妻を探しに巣を出た。

巣から大分離れた場所で、上空から妻を見付けた夫。
ゆっくりとその近くへ降り立った夫は、こちらに背を向けながらムシャムシャと何かを頬張っている妻の姿があった。
もうオヤツを見付けたのか。
さすがは我が妻。
夫が妻へ声をかけようとした時、妻が食している物がチラリと見えた。

それは、アルセルタスの死骸だった。
夫は、ハッと息を飲むと、妻に気付かれないよう、近くの岩陰に隠れながらその様子をしばし窺った。

妻が・・・アルセルタスを食べているっ・・・?!
何故だっ?
どうしてだっ?
だから、頑なに太った事を認めず、認めてしまったなら間食として食べている物の正体がバレてしまう・・・から?

・・・そういえば、妻は確か・・・バツサンだった・・・。
俺で4匹目のアルセルタス・・・。
もしかして・・・元旦那達は・・・。
夫は、妻に対し、恐怖を感じた。
そして、妻に気付かれてしまう前に、その場を飛び去った。

巣に戻った夫は、ガクガクと震える身体を抑えながら、この先、一体どうすればいいのかを考えた。
そういえば・・・聞いた事がある、雌が雄を食べる種族がいるって・・・。
カマキリとか・・・。
まさか、自分がその類の種族だったとは!
・・・だとしたら、これはどうにも避けられない運命ってヤツなのか?!
愛した妻に食べられる・・・雄として・・・これは本望と思うべきなのだろうか?
だとすると、俺は・・・それを受け入れなければならないのかっ?!

夫の葛藤は続いた。
自分でも気付かない内に、かなりの時間が経っていた頃、妻が巣へと戻ってきた。

夫は、腹を据えて、先程見た妻の行動を問いただした。
「俺は・・・運命ってヤツを受け入れるよ。もしおまえが生きながらに俺を食べても・・・」

妻は大変驚いた様子だったが、一つ小さな溜息を付いた。
「バカね・・・生きたままあなたを食べるワケないじゃない!さっき食べていたのは、アルセルタスの死骸よ?既に死んでいたの。雄は雌よりも寿命が短いのよ。雌が雄を食べるのは、私達なりの弔い方なの」
「・・・そ、そうだったのか?」
「いやねー、あなたったら。そんな風に誤解されると思って、あなたには隠していたのに・・・」
「そうか、そうか、ごめんよ・・・うぅぅ」

夫は妻をひしと抱きしめた。
抱きしめられた妻が、一瞬、目を怪しく輝かせたのを夫は知らない。

— posted by JUBIA at 03:33 pm   pingTrackBack [0]

求!カワイイ子役

氷海のとある場所で、ミュージカルに出演するカワイイ子役を募集していた。
カワイイ子役といっても、ただカワイイだけではなく、しっかりとした演技ができる子供を探していた。

「団長、連れてきたニャー」
「おっ?どれどれ?」
一見、ただの魚にしか見えない小さなスクアギルをズルズルとアイルーが引きずってきた。
団長であるウルクススは、そのスクアギルの回りを一周しながらマジマジと眺めた。

「うーん、カワイイかどうかは置いておいて、まー、サイズ的には問題ナシだな。あとは・・・演技力か」
「まー、見てて下さいニャー」
アイルーは、小さなスクアギルに台本を渡した。

スクアギルは、台本の台詞を全て暗記すると、素晴らしい演技を団長へと披露した。
「おぅ!ブラボー!!」
「それじゃ、この子で決まりですニャー」

小さなスクアギルは、リハーサルで自分の出番が来るまでの間、暇を持て余していた。
「ねーねー、アイルーさん、お腹すいたー」
「あぁ、その辺にあるオヤツでも食べながら待っててニャー」
アイルーは用事を思い出しのか、スクアギルを一匹その場に残してどこかへと去っていった。

「オヤツ、オヤツー・・・ん?・・・えもの、えものー♪」
小さなスクアギルは、その場を行き交うスタッフ達へと次々に吸い付いた。
ちぅーちぅー♪

用事を終えたアイルーが戻ってくると、そこには干からびたスタッフ達がバタバタと気を失って倒れており、小さかったハズのスクアギルが元の三倍程の、とても子役とは言えない大きさに成長していた。
「あニャーっ!また一から子役探しニャー!!」

予定していたミュージカルは、当然ながら延期となった。

— posted by JUBIA at 03:30 pm   pingTrackBack [0]

儚き想いを纏う竜

ここは、モンスター学園。
若きモンスター達は勉学に励み、青春もまた謳歌していた。

このクラスで随一の人気を誇るのは、シャガルマガラだった。
その容姿もさることながら、勉強も学年トップで運動神経も抜群。
クラス中、いや、学園中の女子達は、そんなシャガルマガラに熱い視線を送るのだった。

そのシャガルマガラに恋する一匹の女子、テツカブラは勉強は全くダメで運動音痴だったが、菓子作りが趣味の乙女らしい特技も持っていた。

「あ~も~ダメっ!全っ然分かんないっ!」
「ん?どうしたカブラ?」
「あっ、ゴア君!ここのね、遺跡平原に生息する虫を全て書き出せってところが分かんなくて・・・」
「なんだ、そこか。そこは・・・」
幼少の頃からテツカブラと同じクラスだったゴア・マガラは、何かとテツカブラを気に掛けるのであった。

「ゴア君・・・ちょっと相談があるんだけど・・・いいかな?」
「なんだ?」
「あのね・・・シャガルマガラ君なんだけど、その・・・好きな子とか・・・いるのかな?」
「・・・さあな、直接聞いてみたらいいんじゃねぇか?」
「えっ?えっ?そんな・・・」
「アイツの事・・・好き・・・なのか?」
「えっ、えっ、好きとかそんなんじゃ・・・好き・・・だけど・・・」
「・・・じゃ、告ればいいじゃん」
「えーっ?!だって・・・その・・・私なんか・・・」
「ウジウジしてっと、他の女子に取られるぞ?」
「・・・うん、わかった!勇気だして言ってみるね、ありがとうゴア君!」

その日の放課後、テツカブラはモンスターっ気の無い体育館裏へとシャガルマガラを呼び出した。

「用事ってなんだい?テツカブラ」
「シャガルマガラ君・・・あのね・・・好きですっ!私とお付き合いして下さいっ!!」
突然の告白に驚いたシャガルマガラであったが、告白されるのは慣れっこなのか、すぐにいつものシャガルマガラの表情になった。

「ありがとう、僕に好意を持ってくれて。・・・でも、僕は君と付き合うことはできないんだ、ごめんよ」
「・・・ほ、他に好きな子とか・・・いるの?」
「・・・うん、全然片思い中だけどね」
「えっ?シャガルマガラ君なら相手の子もウンって言うよ、きっと!勇気を出して告白した方がいいよ、絶対っ!!」
「そ、そうかな?じゃ、考えてみるよ。なんか、逆に勇気をもらってありがとう」
「ううん、私・・・シャガルマガラ君の事・・・応援するからっ!」

テツカブラは振られた事を悲しむよりも、シャガルマガラの幸せを願ってその恋を応援する事にした。

翌日、園舎の大きな木の下で昼寝をしていたゴア・マガラの元へシャガルマガラがやってきた。

「よっ!賭けは僕の勝ちだったな、約束通り、ポポノタントリプルバーガー奢ってもらうよ?」
「ちっ、テツカブラのやつ・・・本当にオマエに告ったんだな」

ゴア・マガラとシャガルマガラは、テツカブラがシャガルマガラに告白するかどうかを陰で賭けていたのだった。

「しかし、君も罪な男だな。昔からテツカブラと仲良かったのに。・・・って、あれ?まさか、君・・・テツカブラの事・・・」
「は?あんなズングリムックリの女なんて興味ねーよ、俺と釣り合うわけないだろ?」
「・・・(僕となら・・・釣り合う・・・かな?)」
「俺はもっとこう、スレンダーな女子がいいんだよっ!」
「・・・(スレンダーな・・・”女子”か・・・)」

シャガルマガラの想いは永遠に届きそうにはなかった。

— posted by JUBIA at 03:24 pm   pingTrackBack [0]

沈黙、公然、傭兵達の調べ

ハンター達がモンスターを狩る事で、残されたモンスターの子供達は皆、孤児となってしまう。
親を失ったモンスターの子供達は、そのほとんどが他の捕食者の餌食になるか、衰弱していくかのどちらかであった。

そんな現状を嘆いた一頭の心優しいモンスターが、そういった孤児達を集めて世話をし、強く逞しく生きていく術を子供達に教える為に、モンハピ孤児院を設立した。

孤児院で育ったモンスターの子供達は、通常、親離れする時期を迎えると、皆、孤児院を卒業していくか、または、そこに留まって新しく迎える子供達の世話の手伝いをしたりしていた。
今日は、ゴア・マガラがモンハピ孤児院を卒業し、旅立っていった。

俺は、卒業して旅立つ方を選択した。
この世界のどこかに、俺がいるべき場所を求めて・・・。
そんな俺が最初に見付けたのは、様々なモンスターが集い、チームを組んで、依頼をこなす傭兵集団のような場所だった。

そこにいる連中は、ごろつきやら、腹にイチモツを抱える輩がそのほとんどだった。
また、ここでは誰しもが他者に対し、余計な詮索をせずに淡々と依頼をこなす、殺伐としたその雰囲気が今の俺には心地よかった。

ある日、新しい依頼をこなす為、俺はチームを探す事になった。
この危険な依頼には、俺の作戦だと4頭は必要だった。
俺は、残り3頭をどうにか集める事ができた。
空中からの偵察に長けているアルセルタス、地中からの奇襲が得意なガララアジャラ、そして肉弾戦に強いテツカブラ。
皆、この道が長いベテラン勢だ。
この中では俺が一番若く、またこの仕事もまだ慣れていない新モンだった。
その依頼にある目的の場所までは少し遠い。
皆、沈黙を守りながら目的地まで4頭ぞろぞろと歩いていた。

その沈黙を破ったのは、最年長で一番この仕事を長くやっている、通称「隊長」と呼ばれていたテツカブラだった。
「おまえ、まだ新モンだろ、どこ出身だ?」
・・・え?
互いに詮索するのは、ここではタブーだったんじゃ・・・?!

「モンハピ孤児院・・・だ」
俺が答えると、少しの沈黙が流れた。
今までもそうだった。
俺の出身を聞いた奴らは、決まって憐みか蔑むような眼つきで俺を見ていた。
きっと、こいつらもそうだろう。

「・・・ぶ・・・ぶっ・・・ぶわっはっはっはーーーーっ!」
「くすくすくす」
「くっくっくっ」
ふっ・・・笑い者にされるのも慣れていた。
別に・・・どうってことはない。

「誰もそこまで聞いてねーよ、ぶはははっ」
「どこの地方から来たかって聞いてたんだよ、ぶぁーかっ」
「無粋な奴だな、ったく・・・くっくっくっ」
・・・っ?
そ、そうだったのか・・・。

「い、遺跡平原からだ」
「へー、そうか」
「俺は、地底洞窟出身さ」
「俺は原生林だ、よろしく!」
なんか、調子狂ったな・・・。

「ところで・・・おまえ、孤児院出身って事で、俺達が同情したり蔑んだりすると思ったか?そんな事しねーよ、ここの皆はな、おまえなんかよりもハードな人生を生きてきた輩ばっかりなんだよ。だから誰も余計な詮索なんてしねーのさ」
「何もおまえだけが特別って訳じゃないんだ」
「そうさ、そうさ、飯が出るだけ、おまえなんてまだいい方だぞ?」
・・・きっと、ここではそうなんだろうな。
俺はまだ・・・幸せな方だったのかもしれない。

「ところでよ、やっぱアレか?あだ名とかで呼び合ったりするワケ?」
「飯、旨かったか?」
・・・・・・?
これって・・・思い切り詮索してんじゃねぇかっ?

「チームを組んだからには、俺らは隠し事一切無しだ」
「そうそう、信頼関係が壊れるからね。詮索はしないが、隠し事は一切無し!これが我がチームの結束力!」
・・・説得力に欠ける台詞だな。
というより、こんなにフレンドリーな奴らだったのか?

「なあ、そこにもやっぱ魔王とかいたのか?」
・・・た、隊長もっ???

俺達は、依頼を完了した頃には家族同然の仲になっていた。
なんだかくすぐったい感じがしたが、またそのくすぐったさが・・・・案外、悪くない。
俺は、自分の居場所が見付かったような気がした。

— posted by JUBIA at 03:22 pm   pingTrackBack [0]

月刊情報、モンスター在り!

月に1度、各地に散らばっていた特派員のモンスター達が一同に集まり、モンスター新聞を作っていた。
そして今月号の新聞が完成した。

【モンスター新聞!今月号!!】

[今月のトップニュース]
●イビルジョー首相、辞任確定か?!
10日未明、全域を統べるイビルジョー首相は、辞任する事を一部の関係者へほのめかしたという。
理由については、以前より、歳のせいか全域を視察するのが肉体的にキツイと洩らしていた為、体調不良を理由に辞任するのではないか?と各関係者はみている。

[今月のゴシップニュース]
●世紀の異色カップル誕生か?!
ティガレックス亜種さんと、テツカブラさんに熱愛発覚。
二匹はそれぞれ、未知の樹海パークで知り合ったもよう。
世間では「えっ?あの二匹が?」「まさか、そんな・・・」と驚きを隠せないようだ。
テツカブラさんにインタビューを試みると、「私のようなモンスターでも、恋が叶うことがあるんだなって、今、幸せを噛みしめています」と照れながらも、熱愛を認めた。
一方、ティガレックス亜種さんの方は、取材は一切ノーコメントでと取材を拒否している。
今回、この熱愛の成就を記者として祈るばかりだ。

[今月の事故・事件]
●遺跡平原で新手の遺跡荒しか?!
遺跡平原で、今月未明、石橋の一部が欠けているのをたまたまそこを通りかかったモンスターが発見し、直ちに行政へと連絡した。
付近に住むモンスター達は、「非常に脆くなっていた」「いつかは崩れると思っていた」「遺跡を荒らすモンスターは許せない」と、不安と荒らしたモンスターに対する不満をあらわにした。
これを受けた行政は、来月までに遺跡パトロール隊を結成するもよう。

●まさに灼熱の喧嘩?!
地底火山で、テオ・テスカトルとグラビモス亜種による、壮絶な喧嘩が勃発し、数匹の怪我モンスターが出た。
調べによると、本来、テオ・テスカトルとグラビモス亜種はそれぞれ生息エリアを分けていた為、出会う事は無かったと思われていたが、この日たまたま二匹が同エリアで遭遇し、縄張りを巡っての喧嘩が生じたもよう。
怪我をしたのは、クンチュウとリノプロスで、どちらも軽い火傷を負っているとのこと。
その喧嘩を目撃したモンスターによると、互いに熱線やら炎ブレスやらで、ただでさえ暑い地底火山が、まさに灼熱地獄のようだったと話している。

●アルセルタス、御用!
地底洞窟にて、通行モンスターのイーオスさんへ不用意に緑色の粘液を噴射したとして、アルセルタスが逮捕された。
かねてより、地底洞窟で不審者が出没するとの通報を受け、モンスターポリスは巡回を強化していたが、この日も被害直後、近くにいた巡回中のモンスターポリスがイーオスさんの悲鳴を聞き付け、駆け付けたところ、逃げようとしたアルセルタスを逮捕するに至った。
アルセルタスの供述では、「むしゃくしゃしてやった」「誰でもよかった」「後悔している」等、供述では素直に話している様子。
一方、被害にあったイーオスさんは、防御ダウンの効果が切れるまで、モンスターポリスに保護された後、無事に帰宅していったという。
なお、世論では「誰でもいいなら自分で自分に噴射しろよ」「むしゃくしゃしてても、モンスターに迷惑かけてる時点でアウト」「後悔するぐらいならやるな」「死ねばいいのに」等の痛烈な批判が大多数。
厳重な処罰を願うばかりだ。

[来月のお天気]
遺跡平原:概ね晴れ
地底洞窟:湿度に注意
原生林:ところにより一時スコール
氷海:今年一番の氷点下を記録
地底火山:猛暑につき、水分補給を忘れずに
天空山:落下物に注意

— posted by JUBIA at 03:25 pm   pingTrackBack [0]

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